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コラム「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」#54

第79話「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」#54

2020/11/11

プログレッシブ・リンク


プログレッシブ・リンクでは、男性は右回転を起こして女性をプロムナードにリードしますが、その際、実際の右回転を起こしているのは、男性の左足で行う前進運動なのです。この回転では、骨盤よりも胴体の方がわずかに多く回転するため、前述したのと同じ効果を得ることができるのです。つまり、男性の右ヒップは女性の恥骨部とコンタクトしていますから、そこを通じて、女性がプロムナード・ポジションにヘッドを返す情報が伝わっていくのです。

男性が女性にプログレッシブ・リンクのリードをするタイミングについて、ビルは実にシンプルな説明をしていました。プログレッシブ・リンクのタイミングは‘QQ’ですが、その長さをモールス信号に例えたのです。‘ツー’の信号は長く、‘ツ’は詰まるように短い信号ですが、それを使って2歩のステップをこう表現したのです。



“ツー、ツ!”



今日ではなかなか使われなくなりましたが、クローズド・プロムナードもタンゴでは大切な基本要素の一つです。昨今は、距離を伸ばそうとする余りにプロムナード・ポジションの1歩目で前進する人をよく見かけますが、その1歩目はサイド・ステップです。これは、ダンサーが覚えておくべき必須事項です。

プロムナード・ポジションから出ようとするときの準備段階はウォークの時と全く同じで、男性の場合だと、右脚部を緩めることです。これで動きを起こします。この瞬間、男性の左足はまだその場でフロアに着いたままですが、フロアに対する左膝から下の角度が変わります。ここまでの部分を“プリペア(用意)!”と呼び、それから左足のステップが行われます。





男性の2歩目は右膝から下がアクロスに前進して、シャープに、かつ、正確に置きます。この瞬間は“ストライク(打ち込む)!”と呼ばれています。さて、この2歩目はタンゴのベーシック・ウォークと同じく、体重は右足の上に僅かに長く留まります。次の3歩目左足は、足のインサイド・エッジでアクセントをつけてフロアを捕えます。そのため、この動きを“フリック(ピシャッ)!”と呼んでいます。それから、全体重が左足に移ってから右脚部を閉じてボディの下に持ってきます。これは基本の形の作り方で説明したのと同じです。男性は女性に向けて右足を閉じます。“クローズ(閉じろ)!”

偉大なビルから直接クローズド・プロムナードを教わった人なら誰でも、彼のこの言葉を忘れることはないでしょう。



“プリペア、ストライク、フリック、クローズ”



(第79話おわり)