おどりびよりロゴ

 

コラム「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」#50

第75話「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」#50

2020/10/14

第9章メイド・イン・アルゼンチン


ビル&ボビーにとってタンゴが特別なものであったことは紛れもありません。専門的なタンゴの解釈をしたことで、金字塔を建てたのですから。1962年に行われたブラックプールの全英選手権では、二人の有名な“ストーク”を披露したのです。非常に小さな動きの中に絶対的なボディ・コントロールがあり、静寂が漂い、だれにも真似できない雰囲気を創り出していました。(著者のメモ:私の現役時代、主要な大会前には必ずビルのタンゴのレッスンを最後に受けていました。私にとり、正確なタンゴの雰囲気を創り出し、適切な心的状態に持って行ってくれるのはビルだけだったのです。)

第1章と第2章では正しいポスチャーを作る方法、そしてホールドの仕方について述べていますが、音楽が変わろうとリズムが変わろうと、そのボディの機能が変わることはありません。そうは言うものの、タンゴには他のダンスとの違いが幾つもあります。その理由はどこにあるのでしょう?

ご存じのようにタンゴはラテン・アメリカ(中南米)のダンスです。それがボールルーム・ダンスに入っているのには幾つかの理由がありますが、いずれにせよ、アルゼンチンで発祥し、スイングのない、リズムをベースにするというラテンの特質を持っています。こうした違いは、競技ダンスに関わった人ならだれでも、すぐに気づくことでしょう。

タンゴにはスイングはありません!
タンゴには、少なくとも目に見えるほどのライズ・アンド・フォールはありません!
タンゴのステップは1歩1歩置いて行きます!

タンゴのステップの説明の中に“スタッカート”という言葉が頻繁に使われます。しかし、「そのステップにアクセントをつける」という風に“アクセント”という言葉を用いる方がより正確でしょう。スタッカートとは音楽の定義で、「短時間における破裂」ですから、それはダンサーが目指しているものではありません。


タンゴにはアクセントの利いたシャープなアクションから情熱的で滑らかな動きまでが入り混じっています。タンゴの音楽には、そうした要素が既に含まれていますから、それを実際の踊りの中で表現するには、ある種の調整が必要になります。



(第75話おわり)