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コラム「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」#12

第37話「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」#12

2020/01/22

体内エレベーター(2)



横隔膜と骨盤隔膜を同時に緊張させると、非常に大きなプレッシャーが下腹部に生じますが、そのプレッシャーが前後に逃げて行かないのは、深部にある腹横筋・腹斜筋とその反対の背中側にある大腰筋などの働きによります。





この、いわゆるお腹の中にかかるプレッシャーの微妙な違いによって、先に述べた骨盤の傾きが少々あっても良いのか、それともニュートラルの位置に戻すべきかが決定されます。極端な場合、腰椎全体が固定されてしまうこともあります。このように、この複雑なシステムは、腰椎の柔軟度を判断し、その判断に従うよう腰椎の上部に伝えます。

呼吸により、体内では絶えず上下運動が起きているので、ダンサー達は、このシステムを「体内エレベーター」のような感じと表現します。そして、このシステム内では、腹部のプレッシャーの増減が無意識に行われています。それにより、望むようなダンスの動きをするために、また、そうした動きのバランスを取るためにも必要な柔軟性が脊椎には生まれます。

踊っている最中、常に緊張させている筋肉はないという事も覚えておきましょう。

ビルは、体を伸ばすときは下から上にしないことを勧めていましたが、それが良く分かると思います。もし初めに骨盤隔膜に大きな努力を払ったとすると、脊椎のスタートの形が違ってしまうからです。脊椎の形が違えば理想的なバランス・ラインは作れませんし、おかしなバランスが上までつながって行ってしまうでしょう。

前出「ヘッドの正しい位置」で示したビル特有な、頭部(乳様突起)と頬骨を抑える方法(下図)を行うと、頭部と頸部にあるおびただしい数のセンサーの感応が高まります。そして私たちは、サポーティング・フットに対する頭部の位置や重さの正確な情報を得ることができるのです。





(第37話おわり)