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コラム「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」#30

第55話「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」#30

2020/05/27

第4章 継続的な上下運動


この章ではダウンスイングとアップスイングを理解して貰うために、ライズとロアリングに触れて行こうと思います。



ロアリング


スイング・ダンスにおけるロアリングには幾つかの目的があります。それを知るために、ロアリングとは何かという定義とその機能からスタートしましょう。

ロアリングすると足に対する脛骨(けい骨)の高さは縮まり、フロアに対するプレッシャーが増すことで静的エネルギーが蓄積されます。この静的エネルギーが放出されると運動エネルギーに変わり、私たちは空間に動き出して行けるわけですが、そのためには、ボディが体重を運ぶ足の上にきちんと垂直になければなりません。足の上から外れていてはいけないのです!このロアリングは膝を曲げることと良く混同されますが、二つは全くの別物です! 効率的に力を使って動くには、膝の曲げ方と筋肉の関わり具合を知っておく必要があります。試しに、車のアクセルのような感じで脛骨を前に押し出してみましょう。できるだけ長く膝は曲げないようにしてください。膝を曲げないでも脛骨を倒して行けないわけではありませんが、限界は概ね膝頭がトウの上に来る辺りでしょう。




膝をどんどん曲げていくと、膝の筋肉では支えきれなくなって筋肉組織の通常機能が失われると、腿の筋肉が体重を支えにかかります。その結果、脚部の筋肉は通常よりも締め付けられるため、自由なスイングが妨げられてしまいます。膝が自然な範囲で曲げられているときは膝の窪みに反応を感じるでしょうが、それ以上に曲げていくと、その反応は自動的に消えていきます。

つまり、解剖学的に見ると、ロアーには紛れもなく最大値があるということで、もう少し明確に表現すると、膝を曲げるには限界があるということです。ですから、もっとロアーしなさいと言うアドバイスを受けた場合、一般的には、もっと深く膝を曲げる事ではなく、もっと長くスタンディング・フットの上にいて、できる限り長く静的エネルギーを蓄えられる状態にいなさい、という事なのです。

高い状態からロアーしようとする場合、最初の仕事はスタンディング・フットのヒールを下ろすことです。その次にスタンディング・レッグの膝を曲げて行きます(第3章も参照のこと)。要約すると、高い状態からロアーするには2段階あり、(1)ヒールをフロアに下ろす、(2)次に膝を曲げる。その両方とも、その場で行います。




しかし、このロアーのアクションにも二つの例外があります。



例外1.ウィスク・ポジションでのロアー


男性の左足(女性の右足)がウィスク・ポジション(足をクロスした状態)にある時は、普通の時のようなロアーするスペースが無いため、スタンディング・フットのヒールがフロアにタッチし、その場で膝を曲げることができません。その代わり、膝を曲げ始めるときには既に、体は次のポジションへと動き始めます。



例外2.シャッセからクイック・オープン・リバース・ターンに入るときのロアー


シャッセとクイック・オープン・リバース・ターンをつなぐ1歩のステップは、アウトサイド・パートナーにヒール・リードで出て行きますが、このステップはスイングしてどんどん進む目的のものでもありません。シャッセの最後で男性の左足ヒールがフロアに下りますが、この時は、レベル0の形(「第3章 君の足は大丈夫」参照)ですから、次にアウトサイド・パートナーに出て行く繋ぎのステップ(男性右足)はヒールからになります。この右足の上で段階2のロアリング、即ち、膝が曲がり始め、通常のスイングが続きます。






(第55話おわり)