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コラム「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」#52

第77話「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」#52

2020/10/28

ウォークについて


タンゴのウォークはスイング・ダンスの中に現れて来るウォークとは必然的に異なります。タンゴ以外のダンスのウォークは、スイングを創り出すためにありますが、タンゴでそれが行われることは、いかなる状況下でもありません。しかし、ウォークの一般的な原理は当てはまります。では、この表面的には相反して見えることが、どのようになっているか見て行きましょう?

最初にこのことをお話すべきでしょう。左足は常に左鎖骨の下に置き、右足は常に右鎖骨の下に置きます。このことはバランスを維持するために絶対必要なことです。

左足前進はCBMP(コントラリー・ボディ・ムーブメント・ポジション、つまり、一つのトラック上)に置き、右足前進は右サイド・リードを使って置きます。このことは、よく知られていることですが、加えて、タンゴの基本形は左へカーブするように作られているという点にも言及しておきましょう。

では、実際に練習してみましょう。一般的な前進ウォークはツー・トラック(二つの軌跡)上で行われます。左足を左ボディの下に置き、右足を右ボディの下に置きます。左足も右足もLOD同様、左回りに円周上の方に置きます。そうすると、左足は自動的にCBMPの形に置かれますし、右足は自動的にサイド・リードを使って終わることになります。円周上を前進することに注意を払いましょう。円の中心に向かって進むことではありません。このように前進ウォークをすると、ホールドが左に捻じれてしまうといった広く蔓延した過ちを回避することができます。





ここにもう一つ、スイング・ダンスのウォークとは異なる重要な違いがあります。覚えておいて欲しいのですが、スイング・ダンスでの1歩のウォークとは両足が閉じた所から始まり、その出た足に後ろ足が閉じる所までを言いますが、タンゴの場合、それが全く異なっているという事を。

まず、タンゴの1歩は両足がフラットでフロアにある状態から始まります。1歩目に出る前の準備として、スタンディング・レッグ(写真(上)の場合は男性の右脚部)をリラックスさせることで、その脚部を通してボディ・ウェイトが前方へと進み始めます。この時、左足ヒールがフロアから離れ、もはやこれ以上右足の上で体重を維持できないとなった時に、1歩目左足を前方に置きに行きます。その左足が体重を捕えた時点でこの1歩の基本的な動きが完了したと言えます。この時点では、左足の上に体重の約80%が移動し、右足にはまだ約20%の体重が残っていてフロアをプレスしている状態にあります。この右足でのフロアへのプレスは全体重が左足に移動した段階でなくなりますが、その時が来るのは結構後のことです。そのタイミングについて、ビルは次のように正確に述べていました。

タンゴは2/4拍子で“1アンド2アンド”とカウントします。“1アンド”も“2アンド”もそれぞれに“S”カウントですが、後ろ足がフロアから離れるのは“アンド”の“ド”の所です。非常に遅いタイミングですが、これはまさに、次のステップへの準備のためなのです! この方法だと、タンゴのウォークでスイングが起きてしまう事も同時に回避することができますし、次の足がフロアに置かれるとき、その脚部の膝から下の動きにアクセントをつけることもできます。こうしたことはタンゴの特性ですから、タンゴを踊る際には必要条件です。



(第77話おわり)