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コラム「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」#53

第78話「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」#53

2020/11/4

突然止まる


もっともタンゴらしい特徴と言えば、突然止まる動きでしょう。スピードをつけた動きもあればゆっくりとした動き、アクセントのついた動きもあれば滑らかな動きなど、そうした動きの中から突然として、かつ、完全に静止するアクションを創り出す能力が求められます。

当然のことながら、この場合の静止とは外見的なものですが、その静止している感じがタンゴの雰囲気を醸し出すのです。ちょうど、目前の獲物を狙っている時のトラの静けさに似ています。像のように微動だしない形で。



“不動の静けさなのだ!”



シャープなPP


ベーシック・ポジションの次に大切な形はプロムナード・ポジションでしょう。タンゴが発展して来る中で、素早いプロムナード・ポジションが確立されました。見ている観客も、パートナーの女性でさえ驚くほど素早くプロムナード・ポジションになるのですが、これを行うにはどのようなリードをすれば良いのでしょう?

難しいことはありません。理論的にはむしろ大変易しいと言えましょう。男性は自分のベーシック・ポジションをわずかに左に回転させるのです。そうすると、両太腿と両足が同じように左回転して行きます。その結果、男性の右腰は必然的にそれまでよりも、僅かに女性の恥骨に近づきます。男性が起こすこうした動きの衝動が女性に伝わり、女性はヘッドをプロムナードに向けることになります。プロムナード・ポジションとは男女のヒップがわずかにV字の形になることですから、男性としてはヘッドを返す必要はありません。一般的には広く行われていますが。一方で、男性は自分のリードの能力を向上させるために意図的にヘッドを返さず、下半身の動きのみに完全に集中して踊るという練習法もあります。

プロムナードで両脚部をうまく合わせて動かすための素晴らしい練習法をビルは使っていました。プロムナード・ポジションの形になり、両膝の間に風船を挟むのです。そうすると、風船を落とさないようにするために両膝が内側へと締まり、適切な筋肉が使われるようになるからです。膝の働きと言うものは、片方の膝がもう片方の膝に向けて働きかけ、膝同士が離れて行くような動きはしないという事もしっかり覚えておいてください。この風船を使った練習法は、ライト・ランジにも、セイム・フット・ランジの練習にも効果的です。





(第78話おわり)