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コラムボールルームへようこそ 竹内友③

第8話ボールルームへようこそ 竹内友③

2019/04/5

アニメ化され、多くの人に影響を与えた「ボールルームへようこそ」。
今回も、同作品に感化され、実際に社交ダンスを始めた愛好家の方々の体験談をお送りします。

 

話し手


深山さん(仮名)

「背すじをピン!とね」「10DANCE」「ボールルームへようこそ」などの漫画、アニメから社交ダンスにハマり、ダンス歴約1年2ヶ月(2019年3月現在)。高校・大学時代はバンドを組み、現在は自身の社交ダンス経験を漫画やイラストにしてしまうという多彩な趣味の持ち主。目標は競技ダンス進出!

内藤達矢・手島紫乃先生

JDC東部総局 スタンダードA級・ラテンアメリカンA級

 

不安とやりたい気持ちが同じレベル


──お会いするのは、実は、この取材が3回目ですね。山田誠ダンススタジオの「春のダンス祭」というパーティーで私がカメラマンとして入った時に、深山さんの人生初めてのデモストレーションを撮らせていただいたのが最初でしたよね?

深山さん:去年の1月に社交ダンスを習い始めて、5月に初めて出演したのがあのワルツでした。正直、何をどう踊ったかは覚えていないくらい緊張しました……(大汗)。

──始めてから半年も経っていなかったんですか?すごくお上手だったし、印象に残っていますよ。

深山さん:内藤先生に習った当初から、いつか競技に出たいというのが目標としてありました。ジルバが終わってワルツのベーシックに入ったくらいで、その気持ちを先生に伝えていました。

 

イラスト/深山さん


「ど初心者が何言ってるんだ」って言われたらどうしようと思ったんですけど、先生はちゃんと私の話を受け止めてくれて、「だったら早いうちに人前で踊ることに慣れようね」と出演を勧めてくれました。緊張しましたが、今後につながるとてもいい経験になりました。

──山田誠ダンススタジオや内藤先生とはどのように出会いましたか?

深山さん:ホームページで家に近いところを探しました(現在は転居)。いくつか見た中で、体験レッスンのシステムや料金の支払い方が明確でしたので、まずはここに来てみることにしました。

──ホームページ大事ですねえ。

深山さん:正直、本当に社交ダンスは全くの初めてで、お教室に飛び込むのにとってもとっても勇気が要りました。最初にいくら払って、続けるにはどれくらいお金や時間がかかるんだろう?と……。その辺りの情報がわからないと、お教室に入ってみる気にはならないと思います。その点、最初に来たお教室が親切で本当に良かったと今でも思っています。

──内藤先生の印象はどうでしたか?

深山さん:おじいちゃんが出てくると思っていたので、若い先生が出てきて冷や汗をかきました……(笑)。でも、どんな私の話も受け止めてくれて、褒め上手でとてもいい先生です。

 

レッスン中に笑いが絶えない


それくらい不安な気持ちと、やりたいワクワクが同じくらいのレベルだったんです!

 

社交ダンスのカウントの不思議


──深山さんと最初にお会いした時、内藤先生の印象はいかがでしたか?

内藤先生:実は、アニメのボールルームへようこそが放映されて、山田誠ダンススタジオには一つのサークルができるくらい初心者の方がきてくれました。深山さんもその一人です。

──え、すごい。「ボールルームへようこそ」様様ですね。

内藤先生:様様です(笑)。4月28日に予定している今年の春のダンス祭りでは、そのサークルのメンバー8人でフォーメーションをやりますよ。

──私も撮影に入るので、すごく楽しみです!

内藤先生:入り口はボールルームへようこそでも、目標の持ち方は人それぞれです。



深山さんは最初から「雫と清春のように競技に出たい」という気持ちを持っていたので、ダンスのメカニズムのからちゃんと習いたいという意識が高かったです。もちろん、楽しみのために習いたいという目標もいいことです。お教室全体として、それぞれの目標に合わせて教えるようにしていますよ。

──レッスンの中で印象に残っていることはありますか?

深山さん:最初のジルバでいきなりつまずきました。スロー、スロー、クイッククイックというカウントが「なんで一つの小節の中に収まっていないんだろう???」というのが不思議で仕方がなかったです。

 

イラスト/深山さん


内藤先生:音楽やってる人って、社交ダンスのカウントに疑問に持つ人が多いみたいだね。

深山さん:私は高校生・大学生の時にバンドをやっていたので、音の長さがとても気になります。同じ「スロー……」という音でも、音の長さが違うので、スローの音を何種類か作ってそれぞれ名前を変えてくれって思いました(笑)。

──さすが、音感も技術面での意識もすごくきちんとしていますね……。あんまり考えたことなかったかも(冷汗)。

 

「どうすれば勝てる?」という気持ち


──ボールルームへようこその中で特に印象に残っているシーンはありますか?

深山さん:やっぱり最初に憧れたのは「雫と清春」のペアです。いつかあんな風に踊りたいと思って、社交ダンスの世界に飛び込みましたから。
でも、シーンとして印象に残っているのは天平杯での多々良です。

──ああ、このページですね(コミックス3巻を読みながら)。多々良が真子と組んで、賀寿・雫カップルと戦うシーンですね。

深山さん:ここで多々良が「どうすれば勝てる?」って真子に聞くじゃないですか。客観的に見て、(アマチュアチャンピオンの)雫と(ファイナリストの)賀寿、しかも両方ともジュブナイルから経験のあるカップルに、初心者の多々良が勝てるわけありませんよね。

でも、多々良はこの時に希望を失っていないんです。「勝ちたい」「勝つためにはどうすればいいんだろう」って、最後まで真剣にそう思って戦っています。

「どうせ勝てないからいいや」と思ったらその時点で勝負は終わっていて、どんなに難しい条件でもその中で「勝ちたい」「勝つんだ」「一つでも上に上がる!」「そのためにはどうすれば!?」って考えないと、何も始まらないんだなって思いました。この中に身を置いてみたいって、すごく憧れています。

──負けるつもりで参戦しているカップルは誰もいないでしょうね。今日は○予選までは行きたい、という現実的な目標はあっても、それでも最後まで戦っているカップルが徐々に上に上がっていくんだと思います。

深山さん:それと、もう一人印象に残っているのは釘宮さんのパートナーの井戸川さんです。釘宮さんの方がキャラが濃いのであまり目立たないんですが(笑)、普段と競技の時にギャップに驚きました。ダンスの時には、日常から離れてあんな風に輝けるんだって、一気に気持ちを持って行かれました。私もいつか、フロアで映える華のあるパートナーになりたいと思っています。

──全体として、競技に対する目標やなりたいパートナー像をしっかりと持っているんですね。



深山さん:その部分では、ボールルームへようこそに影響を受けている部分がすごく大きいです。ネックはなかなかリーダーが見つからないことです。何度かお見合い(リーダーとパートナーの候補同士で練習をしてみること)をしているんですが、同世代でスタンダード希望、競技に対するビジョンが一致しているとなると、本当に難しいです……。

内藤先生:僕も学連の時に約1年間しかカップルを組めなかったので、見つからない辛さはすごくよくわかります。でも、だからこそ、その後カップルでやっていくためのモチベーションが大きくなるし、一人で研鑽を積む時間は絶対に無駄にならないので、コツコツその時を目指して頑張って欲しいなと思います。

深山さん:そうですね。今は、ダンス友達と色々なパーティーやイベントに行ったり、レッスンを受けたり、練習したりするのも楽しいので、ダンスをやっていること自体を楽しんで過ごしたいと思います。

【取材後記】
前回の取材に応じてくださった佐藤さくらさんは、まずは自分の上達と習っている福田先生や推しの先生の応援、パーティーへの参加など自分の楽しみのために。深山さんはそういった楽しみも持ちつつ、いつかは競技ダンサーになるために。同じ「ボールルームへようこそ」が入り口とはいえ、社交ダンスへの関わり方は人それぞれです。そんな入り口になってくれる魅力的な作品であるとともに、社交ダンスが幅の広い楽しみ方ができることをこの作品が示唆してくれているように感じます。

一連の取材にご協力いただいたさくらさん、福田先生、深山さん、内藤先生、本当にありがとうございました!



取材協力:山田誠ダンススタジオ
スタジオHP

「題字イラスト/月城マリ」