おどりびよりロゴ

 

コラムシャドークロス

第36話シャドークロス

2020/11/25


あらすじ


「独り」が集まる街・東京。 スーパーのレジ打ちで働く赤城冬実(セキジョウフミ)は、対人恐怖症のため「他人」に触れることができない。 けれど「誰か」との出逢いを強く求めていた。 上京し、髪を染め、接客業に勤める、傷付き、振り払われた手を諦めずに出し続けた冬実の元へ現れたのは、相棒不在のダンス・スポーツ選手、長尾忍(ナガオシノブ)。 男女の影が交差した瞬間、音楽は鳴り、火が灯るー。 ”ふたり”が繋ぐ”ひとつ”の人生、歓びと解放のダンス・ストーリー!!
©集英社 となりのヤングジャンプ



社交ダンスにおけるお見合いとは


第2話が「となりのヤングジャンプ」で無料公開されました。「となりのヤングジャンプ」はヤングジャンプ編集部が運営する無料Webマンガサイトで、編集部が厳選したオリジナル漫画が楽しめます。オリジナル漫画だけでなく、ヤンジャン作品の試し読みも公開中しているそうです。気軽に社交ダンスに触れられる商業媒体があるのは、嬉しい限りですね!


▶︎第1話

▶︎第2話

ひょんなことからお見合いが成立した忍と冬美でしたが、第2話では初心者の冬美と組むにあたって「1週間で花になれ」と忍が条件を突き付けます。「リーダーが額縁、パートナーが花」論は「ボールルームへようこそ」でも登場していましたね。

社交ダンスにおけるお見合いとは「一緒に練習をしてみること」で、初めて会ったその日に組むことを決めるカップルもいれば、忍と冬美のようにまずは一定期間の練習を経て相性や目的意識を確認し、正式に結成するカップルもいます。中には一年契約方式で、シーズンの結果によって次の年も延長するかどうかを決めるなんてカップルもいて、そんなカップルのパートナーさんが筆者の親しい友人だったりします。

ちなみに相手を探す方法も、カップルによってバラエティに富んでいます。忍と冬実のように全く門外漢のところからひょんなところで知り合うのは特に経験者の中ではレアケースだと思いますが、あるところにはあるもんです。
例えばJBDFの元ファイナリスト立石勝也・立石裕美組の場合、パートナーの裕美選手は元美容師さんで全くのダンス未経験。そんな裕美さんを、既に競技会での戦績を詰んだ勝也選手が見初めてカップルを結成しています。
筆者の友人でも、初心者や未経験者の恋人などを誘ったというケースを何人か知っています。

他に面白いケースでは、ダンス雑誌のリーダー・パートナー募集情報を出しているコーナーで情報を見て連絡を取り合ったのがきっかけ、なーんてカップルも実在します。これ、誰あろう”あの”グランドチャンピオンの織田慶治・理子組です。個人情報にうるさい今では信じられませんが、当時は個人の電話番号が雑誌に堂々と掲載されていたのです。そこから統一全日本選手権ラテン部門、史上初の6連覇を成し遂げるのですから、カップル結成の妙というのは本当に分からないものです。
私事ですが、筆者とリーダーはインターネットのリーダー・パートナー募集掲示板で知り合いました。

実際のところは、ダンス関係の友人・知人・先生の紹介というケースが多いのではないかと思います。お互いの実力や性格を知った上で、客観的に合うだろうという第三者が紹介してくれるのが安心と言えば安心。しかし忍や冬実、立石組や織田組のように思わぬところからスタートしてトップ街道を駆け上がっていくという話が実際に割とよくある。シャドークロスは漫画だからといって、有り得ない話ではないんです。これは、社交ダンスの面白いところですね。

第1話で初めて一緒に踊った忍と冬美は運命的な手応えを感じているのですが、第2話では練習をしていくうちに「最初に思っていた印象と違う」という違和感を特に忍の方が感じます。冬実がリーダーに頼らず一人で自立して踊れることの重要性を理解していることも、そのためにちゃんと努力しているのも分かっている。だからこそ、もどかしい。
この二人がカップルとしてどう成長していくのかを占う重要な回です。

そして筆者が注目したのは、最後のページ。忍と踊る以外の普通に歩く時、手を繋いだり腕を組んだりするのではなく──。冬美の手の位置に注目してください。冬美の対人恐怖がどう変化していくのかもストーリーの注目ポイントの一つですね。これからも折に触れて、シャドークロスをチェックしたいと思います。



スガワラエスコ先生の過去のお仕事
花待ついばらめぐる春全4巻(集英社YJC)
マドンナはガラスケースの中全2巻(実業之日本社コミックリュエル)
プロミスザスター(集英社BiSH×YJコラボ読切)
アップルロード(集英社YJ読切)
コンプレックスコネクト(講談社YM3読切)