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コラムワルツのお時間

第18話ワルツのお時間

2019/09/5

あらすじ





「最高のパートナーは、手をとった瞬間わかるんだって――…」
ダンススクールの息子なのにダンス嫌いの南たんご。”ひめ”という名まえに負けちゃってる牧村姫愛。接点のなかった2人におとずれた<運命の出会い>!? 大反響の学園サスペンス『ARISA』完結から約半年――安藤なつみが描く、めくるめく恋ダンスの世界。Jr.界の花形カップル、須藤勇誠&白石菫も巻きこんで、4人の恋のワルツが回りはじめる!
©️著者・発行 安藤なつみ/講談社
©️あらすじ 電子書籍レンタルサイトRenta!



手を取った瞬間に最高のパートナーが分かる



これは、過去の出来事がきっかけで競技のフロアから遠ざかっていた中学生のたんごと、自分の名前がコンプレックスな姫愛の社交ダンスを通した恋の物語です。
「ボールルームへようこそ」が色恋を排除し、アスリートとしての競技ダンサーをがっちり描いたのとは対比的に、社交ダンスを通した恋がテーマ。

たんごは実家の教室で生徒を取って教えてはいるものの、過去にパートナーとうまくいかなくなったことが原因で競技のフロアからは退き、二度とコンペには出ないと決めています。
そんな中で出会った姫愛は、名前負けした地味でぽっちゃりな女の子。ふとしたことがきっかけでたんごとホールドを組むことになり、たんごはそのしっくりくる手応えに驚きます。姫愛は未経験ながら、フォロー力が高く、たんごが何をしても吸い付くようについてきてくれるのです。

このお話のカギになるもうひと組のカップルが、勇誠と菫。
二人はなんとかたんごを競技のフロアに戻そうと奮闘します。



その過程で姫愛ちゃんは、どんどん痩せて綺麗になっていく……!未経験者がダンスを始めたばかりの頃、殊に競技の練習などで躍り込むと痩せるんですよね。それに体が慣れてくると、なかなかそれ以上は変化しないけど……(汗)。

殊に菫もやはり過去のある出来事からダンスに対してトラウマを持っていて、素晴らしいダンサーでありながら、時折、そのトラウマが彼女を苦しめます。大切な競技のフロアで、足が動かなくなってしまうことも。
そんな彼女をリーダーとして支え続ける勇誠が、中学生とは思えないイケメンっぷり……!お話の後半では、筆者は完全に勇誠に惹かれていました(笑)。

複雑に絡み合うこの4人の人間関係ですが、最後に解きほぐすのはやはりダンス。踊ってみた時の感触が、それぞれの運命の相手は誰なのかを如実に教えてくれます。社交ダンスの特性が恋に生かされていて、ダンスシーンの絵も綺麗。ぜひ、愛好家の皆さんに紹介したい一作です。



社交ダンスにおけるプロフェッショナルとアマチュア



ちょっとコミック本体の話とは逸れますが、たんごは中学生でありながら、実家のお教室でお金をとって生徒に教えています。漫画というフィクションの話ですし、たんごが序盤でダンスに対して若干ヤサグレ気味なことがよく表されている設定なので、作者が考証した上で、敢えて辻褄を無視して設定したのかもしれません。
しかし、社交ダンスの世界では、この辺り、デリケートな問題が横たわっています。
それは、プロとアマチュアの違いについてです。

ざっくり分けると、プロとアマチュアの区分けには以下の2種類があります。
・ 出場している競技会の区分
プロ部門に出場している選手は、プロと言えます。多くのプロは生徒に社交ダンスを教える形で生計を立てていますが、社交ダンス以外の仕事をしているプロも一定数存在します。
・ 教師資格取得の有無
各団体によって名称が異なる場合がありますが、JBDF(公益社団法人日本ボールルームダンス連盟)の場合、プロフェッショナルダンス教師資格とアマチュアダンス指導員(旧:地域指導員、地域インストラクター)の二つが存在します。
⑴プロフェッショナルダンス教師資格
文字通り、プロとして社交ダンスを教える資格。
⑵アマチュアダンス指導員
自己の研鑽やサークルなどで指導することを想定した資格。交通費や謝礼など以外に、報酬を受け取ってはいけない。

概ねは教師資格を取得しプロの競技会に出場する選手が多いのですが、昨今では生徒を指導しながらアマチュア区分の競技会に出場している選手もちらほら見られます。
2019年のスーパージャパンカップに於いて、社交ダンスで経済活動を行う選手がアマチュア区分にて出場することを禁止する動きがありましたが、それはこのプロ・アマ区分が関係しているのではないかと思われます。要は「お金稼いでるならプロで出場してね」ということなのではないかと。

たんごくんは中学生ということで、教師資格持ってるのかな?アマチュア指導員は18歳以上じゃないと受験できないしなあ……などと、タイムリーな話題だったものでコミックを読みながら考えてしまいました。

……とまあ、この辺りは筆者の邪推ですが(笑)、コミックは面白いのでぜひ。
3巻までで完結していて、各種電子書籍のサイトで販売中です。
 監修に協力されたのは、JBDFスタンダードA級、若代愼&辰巳友莉亜先生です。