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コラムジーザス・クライスト・スーパースター&自宅で楽しむエンタメ

第29話ジーザス・クライスト・スーパースター&自宅で楽しむエンタメ

2020/04/25



全国的な緊急事態宣言により外出自粛が求められている昨今、皆様、日々いかがお過ごしでしょうか。医療関係者をはじめとしてこれまでと変わらず勤務に出なければいけない方々がいる一方で、自宅やホテルなどで引き籠もらざるを得ない方々も多いかと思います。様々な公演やイベントの自粛でエンタメ界も苦境に立たされている中、日常に少しでも潤いを届けるべく、普段なら動画では見られないようなエンタメを配信する動きが見られますね。

東京ディズニリゾートでは、本来であれば来園して楽しめるはずだったショーの一部をYou tube公式チャンネルで公開しています。3月25日から4月30日に公開されているのは2011年よりスタートした「ファンタズミック」。





夜のメディテレーニアンハーバーを舞台に、魔法使いの弟子となったミッキーがイマジネーションの力を信じてディズニーファンタジーの世界を創造していく壮大なナイトエンターテイメントです。
もともとファンタズミックやイッツ・ベリー・ミニー(こちらはすでに配信終了)などの4つのショーは、2020年3月をもって実際のイベントとしても終了予定でした。営業自粛に伴い「見られなくなってしまった」と嘆くディズニーファンの声に応えて配信したものです。

バレエ界ではロシアのボリショイ劇場が
▶︎ボリショイ劇場youtubeチャンネル)4月16日(木)~5月12日(火)(日本時間)に8演目を各日AM1:00(モスクワ時間では前日19時~)から24時間に限り披露し、本コラム掲載以降の演目は以下のようになっています。
・4月26日(日)バレエ『現代の英雄』
・4月30日(木)オペラ『カテリーナ・イズマイロヴァ』
・5月4日(月)バレエ『明るい小川』
・5月8日(金)バレエ『ドン・キホーテ』
・5月12日(火)オペラ『サトコ』

日本テレビ系「金曜ロードSHOW!」では公式HP(▶︎https://kinro.ntv.co.jp/)では、同番組で“今、一番見たい映画”を募集する「見たい映画リクエスト」を実施中。第1弾として選ばれたのは女性からのリクエストが多かったゴールドバーグ主演作「天使にラブ・ソングを…」です。





アメリカでは1992年、日本では93年に公開され、大ヒットを記録。ゴスペルブームの火付け役となりました。5月15日(午後9時~午後10時54分)に放送され、第2弾も順次放映されます。

前置きが少々長くなりましたが、今日のコラムで紹介するのはアンドリュー・ライト・ウェーバーが期間限定で配信しているミュージカルチャンネルからジーザス・クライスト・スーパースター(JCS)です。




「キャッツ」「オペラ座の怪人」「エビータ」などの作曲家アンドリュー・ロイド・ウェバーが米ユニバーサルの協力の下、新型コロナウイルス感染拡大を受けて外出自粛中のミュージカルファンに向けてYouTubeチャンネル「The Shows Must Go On!」を開設しました。同チャンネルでは毎週土曜午前3時(日本時間)から48時間限定で、ロイド・ウェバーの名作をフル配信しています。



あらすじ


今からおよそ2000年前、ローマ帝国領のパレスチナに一人の青年が現れた。大工の息子ジーザスは、人々に新しい教えをとき、数々の奇跡を起こしているという。 圧政に苦しんでいた民衆たちは、たちまちジーザスの言葉に耳を傾けるようになり、彼こそ「救い主」「神の子」と讃える。弟子の一人、イスカリオテのユダにとってジーザスは「神の子」ではなかった。ジーザスを愛するユダには「全て御心のまま」という師の真意が理解できない。マグダラのマリアもまたジーザスを愛していた。彼女は、かげりの無い、純粋で献身的な愛をジーザスに注ぐ。
ジーザスが「ただの人」だと露見したとき、人々はそれを許すはずが無い。 彼らの怒りによってジーザスは押しつぶされてしまうだろう。そう予感していたユダは、師ジーザスを裏切る決心をする。
©ユニバーサル


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この作品は、イエス・キリスト(ジーザス・クライスト)が十字架にかけられるまでの最後の7日間を描いたミュージカルです。

ひとりの人間として神や民衆の狭間で苦悩する「ジーザス・クライスト」と、その使徒の一人でありながら「裏切り者」の名を浴びて歴史にその名を刻むことになるイスカリオテのユダのふたりの愛憎に、マグダラのマリアとの愛情に満ちたもうひとつの関係を絡めて鮮やかに描き出した作品です。

そもそもは1960年代に聖書を題材にしたミュージカル作品にすべく制作が始まったのですが、ブロードウェイでの興行の成功を受け後に映画化されています。私がこの作品を見たのは中学生の頃で、映画版を見たのが最初です。私が通う学校はプロテスタント教育を掲げており、毎朝礼拝をしたり聖書の授業があったりしました。
ちなみに私自身はキリスト教徒ではないけれど、クリスマスの時期になるとテンションが上がるし、街に流れる大抵のクリスマスソングを口ずさむちょっとイタイ大人になりました。クリスマスになると、イエス・キリストの生誕をテーマに演劇をする「クリスマス・ページェント」という行事があるのですが、私が演出を任された年はダンスも交えて演じました。もちろん!

そんな聖書の授業の一環で鑑賞したのが本作「ジーザス・クライスト・スーパースター」です。1960年代にロンドンで作詞家として活躍していたライスと、ウェバーがタッグを組んで作った作品のうちの一つで、20代の若い二人が聖書という挑発的な題材を、芝居によるセリフが一切なし、ロックな楽曲だけに乗せて進行する世界初の「ロック・オペラ」というさらに挑戦的な意欲作でした。
先行リリースが1970年1月にはビルボード100位圏内に入る中ヒットを記録し、この勢いにのってLP2枚組みの大作が完成します。イエスを悩める人間として描写したことが冒涜的とされ、ラジオでは放送を禁じられたそうです。ところが売れ行きは好調。71年にビルボードのアルバムチャートで1位を記録し、同年、ブロードウェイで公式舞台版が上演され、こちらも好評を得ました。

後に映画監督ノーマン・ジュイソンが、聖書に描かれる風景の中で現代の若者が「JCS」を演じるアイデアを採用して、全編イスラエル・ロケで作られたのが映画版です。スタジオでの撮影は一切なく、気温は実に50度近い荒野と遺跡という環境下でキャストたちが演じ、生音源を確保するために崖の上にスピーカーを担ぎ上げるなどスタッフにとっても過酷な撮影となりました。
その甲斐あって、73年に公開されるなり映画は大ヒットしゴールデングローブ賞を受賞しました。映画版「JCS」が一番の「JCS」と言い切るファンも多いのです。

実際、私が多感な中学生の時に授業で鑑賞した時も、ジーンズやパンクなファッションに身を包んだ若いキャストたちが砂漠の中で踊り、歌う姿に度肝を抜かれました。キリスト教徒の間ではいわゆる問題作以外の何物でもなく、よくぞこれを学校の授業で見せたもんです。確か、授業を担当したプロテスタントの司祭の資格を持つお若いチャプレン同席のもとで見た記憶があります。多分、カトリックの学校だったら無理だったでしょうね。プロテスタントはまだ、カトリックよりは多少緩い部分がありますから。マグダラのマリアとイエスの関係も割とセクシャルに描かれていて、かなり衝撃を受けたように覚えています。

一番圧倒されるのは、作品の音楽の力です。今でも耳に残る音楽は、おそらく少しでも舞台芸術や映画に興味にある人だったら聞いたことがあるはず。思わず口ずさんで、衝動を揺さぶるような力を持っています。
演劇批評家らからは絶賛を得ましたが、敬虔なキリスト教徒やキリスト教原理主義者らからは「聖書に忠実ではない」「神に対する冒涜だ」など公開当初から道徳的な批判を受け、1971年のブロードウェイ公演の初日は、キリスト教やユダヤ教の信者がプラカードを掲げて劇場前でデモを行うなど周辺が騒然としたそうです。

日本では劇団四季が1973年に「ロックオペラ イエス・キリスト=スーパースター」を初演しました。浅利慶太さんが独自に演出し、曲目以外の演出が原作と大きく異なることからタイトルも変わっています。実は、イエス役で主役デビューした鹿賀丈史さんの出世作でもあるんですよね。本作で絶賛されて四季のトップスターの仲間入りを果たします。

そんな不朽の名作を動画配信で鑑賞できる貴重な機会です。ぜひ日々の彩りにご覧ください!ちなみにALWのこれまでの配信は第1回目がジョセフ・アンド・アメージング・テクニカラー・ドリームコート、JSCが第2回、第3回目はオペラ座の怪人25周年に2011年のロイヤルアルバートホールで行われた記念公演でした。なかなかこのレベルの舞台公演を映像で見られる機会はありませんよね。
今後の配信も楽しみです!
他にも素敵なコンテンツがあったら、ぜひぜひみなさんでシェアして自粛生活を乗り切りましょう!