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コラムShall we dance?(洋画)後編

第17話Shall we dance?(洋画)後編

2019/08/25


配給・画像 ©ミラマックス/ギャガ
書籍 ©周防正行著作/文春文庫

実は周防監督自身が両者の違いを語っていた



日本で製作された映画がハリウッドに持ち込まれてリメイクされるケースは増えてきたものの、その時の状況を監督自身が具に語って書籍にまでなっていると言うケースはそれほどないのではないでしょうか。
それが他ならぬ社交ダンス界で起こっていた、と言うのは映画史を紐解いてみてもなんだか不思議な気がします。
それが「『Shall we ダンス?』アメリカを行く」、そしてその続編である「アメリカ人が作った『Shall we ダンス?』」の2冊です。

1作目の「『Shall we ダンス?』アメリカを行く」の冒頭は、周防正行監督が米国の映画配給会社、ミラマックス・ギャガの担当者と面会したところから始まります。そこから、映画監督で原作者である周防監督自身が、製作した映画に対する自身の権利のなさへの不満を、清々しいほどに縷々綴っています。

要約すると、日本においては映画の製作に対してお金を出した大映に全ての権利があり、周防監督に商業的権利は何もないのです。
ミラマックス・ギャガはShall we ダンス?のリメイクをするにあたって、原作者として周防監督を尊重して(と言うか、尊重したポーズを取ることにより、コアなファンからの批判を避けるために)面会に来たものの、監督は「何の決定権のない僕に会ってもね…」と率直な感想を漏らしています。

そして最終的には、周防監督は渋々ながらもミラマックスの意向に沿って、日本版をショートバージョンに編集することを受け入れ、ハリウッド版が誕生したと言うわけです。
この辺りは当コラム第2回のボヘミアン・ラプソディでフレディ・マーキュリー率いるQUEENが、楽曲を短くしろと要求されたことを彷彿とさせますね。

その中でも周防監督が何にこだわって、ミラマックスと映画の編集について交渉したのか。日米の文化の違いの中で、どこをどのような考え方で改変することにしたのか……何を譲って、何を譲れなかったのか。それが監督自身のインタビューや紀行文として、少々冗長なほど記載されています。
この粘り強さこそが、良質なコメディを生み出す秘訣なのかもしれません。
少々インタビュー部分が長く感じられる向きもありますが、読了後に映画を見比べてみると、また新たな発見があります。



あのダンサーが登場している!



そして、社交ダンスファンとしては、何と言っても外せないのがあのSlavik Kryklyvyy&Karina Smirnoff(スラヴィック・クリクリヴィー&カリーナ・スマノフ)が登場していることです!

スラヴィックは2000年にアマチュアチャンピオンとなり、注目を浴びる中でのターンプロ、2005年までカリーナとカップルを結成しました。
そのオシャレで斬新な踏風に世界中が衝撃を受け、ブライアン・ワトソン&カルメンに次いで世界二番手まで登りつめます。
その対照的なダンスに、ダンス愛好家はブライアン派とスラヴィック派に二分され、毎回どんな戦いが繰り広げられるか熱狂したものでした。

カリーナはスタンリー・トゥッチ演じるリンク(日本版では竹中直人演じる青木)と教室でサンバを踊るシーンや、ジョンが遊びに行くクラブホールで熱いラテンダンスを踊るシーンでダンサーとして登場します。
リンクと踊るシーンでは、カツラが取れてしまい、悲鳴をあげて逃げ出す演技なども披露。





スラヴィックは、映画の後日譚部分で、競技選手として復帰したポリーナの相手役として登場します。

日本版では後日譚の部分は描かれなかったシーンで、それぞれのハッピーエンドを強調するために付け足された演出のようです。
通常チャチャでよく使われる楽曲でタンゴを踊っており、スラヴィックやジェニファー・ロペスのスキル的にも、いっそラテンにしてしまえばよかったのにと思わないでもありません(笑)。

映画公開直後、とある武道館で行われた日本国内の試合にスラヴィックとカリーナが出場した際に、
「ジェニファーとカリーナどちらがいい?」
とインタビューで聞かれ、
「あー、えーと、とにかくジェニファーとの出演はいい思い出なんだ」
と言葉を濁し、”I do not blame him.”(私は彼を責めないわよ)とカリーナの笑いを誘ったお茶目な一面も持ち合わせています。

そんな彼らのダンスやキャラクターにはファンも多く、カリーナとのカップル解消後、スラヴィックの数度の他ダンサーとのカップル結成&解消にも関わらず、
「再びカリーナとのペアが見たい」
と多くの声が寄せられました。そんな声に応える形で、引退後はデモンストレーションを披露していた二人でしたが、日本国内では2018年8月11日及び12日の二日間開催されたワールド・スーパースターズダンスフェスティバルにおいて、カップルとしては惜しまれつつ完全に引退致しました。





そんな二人も登場しているハリウッド版「Shall we Dance?」。
公開から一定の日月を経過した現在、2時間もかからず気軽に見られるコメディとして楽しめます。皆さんも今一度、肩の力を抜いて楽しんでみてはいかがでしょうか?