2021/08/25
少女漫画の名作、有閑倶楽部が連載開始から今年で40周年を迎えます。実は第1巻、Part3で社交ダンスが登場しています〜!
聖プレジデント学園の社交ダンス部に所属する澤の鶴美智子・大関真悟組は、神無祭(かんなさい)という伝統ある大会を目前に街で絡まれて大ケガを負ってしまう。最後の大会を有終の美で飾りたいと必死で練習していた優勝候補のふたりは嘆き悲しむが、それは対立候補を潰してノミ行為で稼ごうとする黒松学園のP T A、高清水の裏工作だった。有閑倶楽部のメンバーは同級生の仇を打つべく行動に出る。それまでにメンバーがロシアのスパイから図らずも入手した、極秘研究のマイクロフィルム争奪戦も関わっていて…!?
© 集英社・一条ゆかり
有閑倶楽部は1981年に月刊誌リボンで連載をスタートさせた、言わずと知れた少女漫画の金字塔です。掲載される雑誌はその時々で変わったものの、今年で連載開始から40周年を迎えます。
文字通りお金持ちの子女たちが暇を持て余して作った有閑倶楽部のメンバーは6人。成績は万年ビリに近いけど、正義感が強くてケンカにめっぽう強い悠理。頭脳労働を一手に引き受ける医者の息子でありながら、実は拳法に精通している清四郎。茶道の家元の娘で大和撫子かと思いきや、意外と気が強い野梨子。警察官の息子なのにガラが悪いお友達がたくさん、メカ担当の魅録。派手な美人でお色気担当、玉の輿狙いだけどすごくいい奴の可憐。スウェーデン人とのハーフでルックスを武器に恋愛にうつつを抜かすけど、報われない美童。
暇を持て余した彼らは色恋沙汰や学生同士の身近なトラブルはもちろん、政治闘争に反社会的勢力の抗争、果ては国際問題やオカルトに至るまでなんでもござれ。進んで事件に首を突っ込み、解決に至るという痛快な漫画です。
集英社文庫版に収録されている『Making of 有閑倶楽部』では、一条ゆかり先生が制作過程を振り返っています。当初は野梨子と清四郎・美童と可憐・悠理と魅録という3組のカップルによる学園ロマンスコメディになる予定だったそうです。ところが当時の担当編集者が新連載の予告文に『学園アクションコメディ』と入れてしまい、急遽設定を考え直したとのこと。予告のキャッチに合わせて中身まで変えてしまうなんて!そんなきっかけで現在の有閑倶楽部が生まれたんですね。
Part3のテーマは社交ダンス。聖プレジデント学園の社交ダンス部に所属する澤の鶴美智子・大関真悟組は、神無祭(かんなさい)という伝統ある大会を目前に街で絡まれて大ケガを負ってしまいます。そこには悠理の父ちゃんの会社の雇われ社長、高清水がやっているノミ行為が関わっていました。高清水は黒松学園のP T Aでもあります。他のカップルを蹴落とし、同学園から出場する息子のユズルと娘のマリエを優勝させて大儲けしようと企んでいたのです。3年生という最後の年を迎え、有終の美で飾りたいと必死で練習していた大関は腕を骨折、美智子もケガを負い、ホールドを組むことすらできません。
設定が破天荒なのでつい忘れがちですが、聖プレジデント学園は高等学校。神無祭(かんなさい)は伝統ある大会ということですが、高校生を対象にした社交ダンスの大会というのは40年前も今も存在しないのですね。他の作品だと『背すじをピン!と〜鹿高競技ダンス部へようこそ〜』が、実際には存在しない高校の競技ダンス部を舞台にしています。高校の部活でダンス部というと、創作ダンスやヒップホップがいまだにメイン。40年前なら風営法の縛りも存在していたはず。早く漫画のように、若い世代から気軽に社交ダンスを楽しめる世の中になるといいですね。
設定は架空の話ではありますが、衣装は40年前のリアルな社交ダンスを取り入れています。膝丈のオーストリッチやチュールでふわふわの衣装は、1970〜1980年代スタンダードドレスの主流でした(画像が荒くてすいません)。
美智子のようにレオタードにパニエ、パニエの下にはスカートをふわふわさせるためのチュールを履いているのも、当時の学連女子の主流。今でもレオパニって使われてるんですかね?私が社交ダンスを始めた10ん年前にも、まだオーストリッチ付きの短めドレスは競技会に存在していました。今読むとちゃんと取材して描いてくれたんだなあと、懐かしくもリアルな感覚が蘇ります。
ケガをして出場できなくなった二人のために、有閑倶楽部が暇つぶし半分ではありますが、なんとかしてあげたいと考えます。しかも高清水の関与が判明して尚更、彼らの血が騒ぎます。聖プレジデント学園のタイトルだけは譲るまいと、なんと代役に選ばれたのが可憐と美童です。
スウェーデン人とのハーフで、子どもの頃から生活の中でダンスを自然と覚えている美童と、美童に手解きを受けていた可憐。なんといってもふたりは容姿が美しく華がある。そうはいっても3年間競技のために練習してきたライバルたちに、たった1週間の練習で到底勝てるはずがありません。
「彼女たちは優勝するつもりだったんでしょ。恥なんかかきたくないわよ、清四郎、なんとかして!」
そういったことが嫌いじゃないどころか大好物のメンバーは、ノミ行為も潰し、聖プレジデント学園のタイトルも守れる一石二鳥の案を考えます。一方でダンスの特訓を受ける美童と可憐は、
「ダンスがユーガなんてウソばっかし!これじゃあ100m全力疾走を一日中だわよ」
悲鳴をあげつつ特訓に勤しむ日々。うん、分かるぞ、その気持ち。
そして事件はマリエの、
「あたし、ダンスしか取り得ないのに。何位になってもいいから後ろめたい思いして踊りたくない。だって踊るの好きだもの」
という思いを受けて、ロシアのスパイのマイクロフィルム争奪戦も絡みながら、一気に解決へと疾走していくのです。
もちろんメンバーそれぞれの得意分野を活かして事件が解決していくのが最高に楽しいんですけど、ダンスをやっている人なら一番共感するのはマリエちゃんじゃないかな。名作漫画を彩る社交ダンスを舞台にした痛快活劇。40周年を機にぜひご一読ください!