アニメ化され、多くの人に影響を与えた「ボールルームへようこそ」。
同作品に感化され、実際に社交ダンスを始めた愛好家の方々にお話を伺ってみました。
話し手
佐藤さくらさん
都内メーカーにお勤めの会社員。「ボールルームへようこそ」のアニメを見たことがきっかけで、篠田忠ダンスカレッジの門を叩き、福田健一郎先生にスタンダードを師事して現在社交ダンス歴約1年半(2019年2月現在)。社交ダンスの他に、スキーや食べ歩きも大好き。今の目標は「スローフォックストロットを綺麗に踊れるようになる」こと!
福田健一郎先生
JBDF東部総局 スタンダードA級・ラテンアメリカンD級
身長181cmの長身とポイントを押さえた優しいレッスンで、さくらさんの社交ダンス熱をますます過熱させている。
足が4本になる感覚を求めて
──さくらさんが社交ダンスを始めたきっかけは、まさにボールルームへようこそだったそうですね?
さくらさん:アニメの「ボールルームへようこそ」がきっかけです。実は、放映に気がついて見始めた時にはもう3話目になっていて、
「もう〜、私のバカバカ!なんで1話目から見なかったの〜」
とすぐに夢中になり、そのまま最終話まで欠かさず放映を見ていました。放映後はBlue lay-BOXも購入して、ボールルルームへようこそのスペシャルイベント※にも参加しましたよ。そのままどっぷりはまってしまいました。
写真:ボールルームへようこそスペシャルイベント「Final Heat.〜Dance&Recitation&Live〜」パンフレット、DVD-Box全巻購入特典雑誌
──特に印象に残っているシーンはありますか?
さくらさん:足が4本になるという感覚ですね(7〜9巻)。多々良が新しいパートナーの千夏ちゃんとカップルを結成して練習を重ねるうちに、パートナーと一体になる感覚を掴みそうになって、最初はその感覚に戸惑って恐怖感すら覚えるんですけど、清春くんたちにそれはダンサーとしてよくある感覚だと諭されて理解しますよね。それから千夏ちゃんと激しくも建設的な議論を重ねるうちに、試合の中で自分の足が4本になって、相手の質量を利用する境地に至ります。あの感覚は、他のスポーツやダンスにはない、社交ダンス独特の感覚なのかなと思って、読んでいてゾクゾクしました。いつかそんな感覚を味わってみたいです。
他には、物語の最初の方で、多々良が足の裏の皮が剥けるまでワルツのベーシックを踊るシーンも強く印象に残っています(1巻)。
それに釘宮さんと多々良のスタイルの違いを解説したあたりも興味深いです。同じ先生に師事していても、釘宮さんは正統派のイングリッシュスタイル。多々良はもっとアグレッシブですよね。
──ちょっと前だとイングリッシュスタイルの対義語はイタリアンスタイルだったように思いますが、今はアグレッシブに身体能力を限界まで使って踊る選手も増えてきましたからね。今はなんていうのが適当でしょうね(笑)?
さくらさん:スタイルの名称はわからないんですけど、同じ条件で習っていても踊り手の個性が浮き彫りになるんだな〜、ダンサーはそんなことに悩んだりするんだな〜と印象に残っています。
緻密なメモが上達を支える
──福田健一郎先生との出会いを聞かせてください。
さくらさん:社交ダンスへの熱が冷めやらなくなった頃、もうこれは習うしかない!と思い立って、会社の帰りにシューズを買いに行きました。スタンダードとラテンと兼用のヤツですね。
次に、お教室を探そうとスマホでググりました。
──シューズを買ったその日にですか?
さくらさん:はい。習うなら楽しく習いたいと思って……帰りに飲みに行くとかですね(笑)、会社と家の間で良さそうなエリアに目をつけて検索して、「篠田忠ダンスカレッジ」を見つけました。
──本格的なお教室で驚いたのではありませんか?
(注:篠田忠ダンスカレッジは、世界選手権第3位に輝いた元全日本チャンピオン篠田忠・富子先生が経営指導されており、多数の競技ダンサーを輩出した有名なお教室です)
さくらさん:社交ダンスのことが多少わかってきた今となっては、なんて無鉄砲なことをしたんだろうと慄いています(笑)。電話をかけてみたら、問い合わせ受話器を取ってくれたのが福田先生だったんです。
「今からでもどうぞ〜」と快く言っていただけけたので、すぐに体験レッスンを受けに行きました。
──思い立ってシューズを買いに行って、その足で体験レッスン……ということですよね?すごい行動力ですね!
さくらさん:なんだかすごく卑近な理由で申し訳ないんですけど、私タバコがダメなんですよ。ニオイもダメ。あと、怖い先生はもっとダメ!福田先生はタバコを吸わないし、優しいし、背が高くて踊りやすいし、面白いし……でもちゃんと教えてくださるし、そのままこちらのお教室に居ついて、今に至ります。
それに、オーナーの篠田忠先生もお茶目で気さくだし、富子先生のレッスンは見ているだけでも勉強になるし、今となっては本当にこのお教室で良かったです。
──福田先生にご質問ですが、さくらさんが問い合わせて来られた時の印象はどうでしたか?
福田先生:ボールルームへようこその影響で問い合わせが来たのが初めてだったので、単純にまずは驚きました。それからはすっかりこのお教室に馴染んで、どんどん上達していますよ。とにかく元気でバイタリティがあって、僕の方もレッスンで元気をもらっています。
──レッスン内容もかなり高度でしたよね?スローフォックストロットをやっていましたし、ハイホバーやスローアウェイオーバースウェイなど、かなり高度なアマルガメーションかと思うのですが。
福田先生: 元々かなり本格的にスキーをやっていた経験があることもあって、きちんと上達したいという意識が高いんです。いつもレッスン後に習ったことをメモしているんですが、そのメモの絵までがどんどん上達していて驚きます(笑)。
写真:さくらさんのレッスンメモ。いつもレッスン後30分程度かけて丁寧にメモするのが習慣。直筆の図解が豊富でこのまま出版できそうなクオリティ
わかりやすい目標は敢えて持たない
──さくらさんの今後の目標は何かありますか?競技会に出てみたいとか、デモンストレーションをやってみたいとか?
さくらさん:それって、よく聞かれるんですよね。お教室でよくご一緒する生徒さんにも「近いうちにデモに出るんでしょう?」って。それって社交ダンスを習い始めたら、普通のことですか?
──そうですね。目標があったほうが上達しやすいのは事実かもしれないですね。
さくらさん:私は、今はコツコツ上手くなりたいという以上のことはないですね。実はうちは母がダンス経験者で、デモをやるならそれなりに恥ずかしくないレベルになってからにしてちょうだいって言われているんです。
──お母様、厳しいですね(笑)。
さくらさん:自分はトロくて、身体も硬いですし……機会を得て踊るなら、多分他の方より数倍時間をかけて取り組まないとダメなんじゃないか、という気持ちがあります。
それと、限られたお財布の中で(笑)、福田先生の応援に競技会にも行きたいし、ツイッターなどで繋がったダンスのお友達とパーティーやイベントにも出かけたい。社交ダンスを丸っと余すところなく楽しめたらいいなと、それに尽きますね!あと、ついでに背中のムダ肉もやっつけまくりたいです!
【取材後記】
社交ダンスの愛好家というと、競技ダンサーか、デモンストレーションに向けて頑張るお教室ダンサー、パーティーダンサーなどなど……何かにカテゴライズされた楽しみ方をされる方が多いような気がします。さくらさんはそのどれにも当てはまらず、自分でコツコツと努力をして、確実な上達を目指していることが感じられました。
また、パーティーもサロンにも足を運び、SNSや様々な場所で仲良くなったお友達と誘い合わせて競技会やイベントにも遊びに行くという型にはまらない楽しみ方を実践しているように思います。
そして、食べることも飲むことも大好きということで、筆者もさくらさんオススメの素敵なお店でご相伴に預かってまいりました……(ちゃんと取材もしてきたよ〜)。
「ボールルームへようこそ」によって、型にはまらない新しい社交ダンスの関わり方を見つけた愛好家が増えているのかもしれません。
取材協力:篠田忠ダンスカレッジ
スタジオHP
「題字イラスト/月城マリ」