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コラム踊らん哉 Shall We Dance

第27話踊らん哉 Shall We Dance

2020/02/25

Shall We Danceという映画の話になると「邦画ですか?洋画ですか?」という話になりますよね。でも、実はもう一つ名作があるんですよ〜。それが「踊らん哉 Shall We Dance」です!

あらすじ



パリで名を挙げたアメリカ人ダンサーのペトロフ(フレッド・アステア)は、憧れていたレヴュー・スターのリンダ(ジンジャー・ロジャース)がニューヨークへ帰ることを知り、彼女と同じ豪華客船に乗り込んで急接近を図るが、そのためふたりが極秘結婚したとの噂がニューヨークに流れてしまい…。
ミュージカル界の大スター、アステア&ロジャース主演による『有頂天時代』に続くコミカルなミュージカル映画。音楽担当はジョージ&アイラ・ガーシュウィン兄弟で、原題でもある『Shall We Dance』など、クラシカルかつモダンな楽曲の数々に乗せて、アステア&ロジャースが優雅に踊る姿は実に壮観だ。監督は『艦隊を追って』などで知られるマーク・サンドリッチ。
©RKO/あらすじ:Amazon



フレッド・アステア&ジンジャー・ロジャース7作目


本作は、あのフレッド・アステアとジンジャー・ロジャースのコンビが送る全10作のうちの7作目となるロマンティック・コメディです。
ダンサーとして姉と活動していたフレッド・アステアが、ハリウッドに進出後、ジンジャー・ロジャースとコンビを結成し、経営難だったRKOの経営を立て直してしまうほど数々の大ヒットを飛ばしました。
もっと興行的に成功した作品はたくさんありますが、私は社交ダンスの愛好家にはこの「踊らん哉」をオススメします。なぜなら、アステアのペアダンスを見ることができるから!





もちろん、いわゆる社交ダンスと聞いてイメージするようなスタンダードのホールドよりはだいぶカジュアルですが、あまりにも自然でソフトなリードは魔法のよう。踊りながらフッとホールドを緩めたり、手を離したりして、見えないホールドの中でパートナーのジンジャーを自由に泳がせているかのようです。
アステアのペアダンスに問題があるとしたら、「ボールルームへようこそ」で多々良が言うように「男性が額縁、女性は花」であるべきところ、アステアのステップが華麗すぎて、どうしても目が行ってしまうことでしょうか(笑)。いや、もちろんジンジャーも素敵ですけどね。

実のところ、ジンジャーはアステアとのコンビで大成功を収めるものの、彼の添え物的な立場に満足できずに演技派への転向を目指し、『恋愛手帖』で1940年にアカデミー主演女優賞を獲得します。
その後のアステアは、1940年からはフリーに転向し、タップ・ダンサーのエレノア・パウエルやリタ・ヘイワースらとコンビを組み、タップダンスで競演を見せます。いずれも一定の成功を収めているのを見るにつけ、きっとアステアがどのパートナーにも敬意を払い、持てる限りの全てを教え込んだんだろうなあと思うのです。アステアはダンサーとしてのキャリアが目立ちますが、歌手としても、役者としても一流でしたしね。

アステアのペアダンスを見たいなら、「カッスル夫妻」もオススメです!
この映画は新しい社交ダンス(モダンダンス)を大流行させた夫妻の伝記的映画で、ダンスシーンにおいてはペアダンスが中心です。後に撮られるミュージカル大作のような派手な場面がないせいか、アステア作品の中では低い評価に甘んじていますが、素晴らしい映画です。「踊らん哉」の終始楽しい雰囲気とは対照的に悲劇的な最後を迎えますが、アステアのダンスが悲しさや切なさを増幅します。



プライベートも完璧にイケオジなアステア



アステアといえば、マイケル・ジャクソンとの関係性も有名ですね。彼が一世を風靡した「ビリー・ジーン」のムーンウォークを見ると自ら挑戦し、マイケルが直に教え、既に80代半ばの身でありながら鮮やかにマスターしたのだそうです。
マイケルの方も、アステアを強く尊敬し「もっとも影響を受けた人物の一人」と発言しており、幼い頃からアステアの真似をしたり、アステアごっこをして妹のジャネットと遊んだとも語っています。アステアのステップを取り入れていると公言していることから、二人のダンスシーンを比較したこんな動画まで世に出回るほど(笑)。





殊に、イケオジ大好きな私としては、アステアがプライベートでも完璧な紳士だったことは外せません!
初婚のお相手はボストンの大富豪のお嬢様、フィリス・ポッターでした。フィリスは人妻だったわけですが、アステアとはもちろん、今、何かと話題な不倫などではなく……きちんと離婚後に結婚し、21年間の結婚生活を送ります。
ところが46歳の若さでフィリスが脳腫瘍で急逝し、長年独身を貫きますが、晩年、女性騎手のロビン・スミス(当時35歳)と年の差を乗り越え再婚。アステアが1987年に88歳で亡くなるまで、ロビンと幸せに過ごしたのです。

ダンサーといえば、ハリウッドスターといえば、色恋沙汰は芸の肥やしという風潮がまだ根強かったこの時代に、それぞれの女性に一途に身を捧げたのではないかと!
(……本当のところは神のみぞ知るですが、きっとそうだと信じている!!)

ファッションの面でもとてもお洒落で隙がなく、スーツはサヴィル・ロウの名門テーラー「アンダーソン&シェパード」を、靴は「グッチ」などを愛用しており、その装いはかのラルフ・ローレンを虜にしたほどだったそうです。
うーん、全てにおいて完璧すぎる……



©️Interfoto/アフロ


そんなアステアシリーズは、時を経てもなお色褪せず、なかなかDVDも値下がりせず(笑)、手が届きにくいのですが、時折、名画座などで特集が組まれています。筆者が時折訪れるプリマヴェーラ渋谷という、ご夫婦が二人で経営している名画座があるのですが、そこでもこれまで2回ほどミュージカル特集が組まれて、スクリーンでアステア作品が上映されたことも。



プリマヴェーラ渋谷


ぜひ、タイミングを見て足を運んでみてはいかがでしょうか!