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コラム劇場版H E R O  久利生公平、最大の危機

第46話劇場版H E R O  久利生公平、最大の危機

2021/09/25

社交ダンスについてはこんなステレオタイプな扱われ方もあるってことで……

あらすじ


6年ぶりに虹ヶ浦から東京地検・城西支部に異動となった検事・久利生公平(木村拓哉)はある時、目下離婚調停真っ最中の芝山貢(阿部寛)に代わり傷害致死事件の公判検事を任されることになる。早期に決着がつくと思われていたが容疑者が一転無罪を主張し、刑事事件無罪獲得数日本一の敏腕弁護士・蒲生一臣(松本幸四郎)の法廷戦術に苦戦を強いられる。そんな中、とある贈収賄事件が関係することを特捜部より知らされ、久利生と雨宮は捜査の過程で韓国・釜山へ向かいながら奔走することになる。
やがて傷害致死事件の裁判は贈収賄疑惑の今後の展開を左右する裁判として全国民の注目を浴びるようになる。贈収賄を何としても証明したい特捜部に、互いを守るためにアリバイを工作する被疑者達。大きな事件を前に浮足立つ城西支部の面々。今までに無い危機を迎えた久利生は、それぞれの思いが絡むこの裁判を前に検事生命を掛けた一世一代の大勝負を仕掛ける。
© フジテレビ



登場することに意義がある!?




言わずと知れた2001年に連続ドラマがスタートし、特別編やシーズン2までヒットを飛ばしたフジテレビ系ドラマ『HERO』の劇場版です。マスカレード・ナイトの劇場公開に合わせて9月20日に地上波で放映されました。ちなみに月9ドラマのオリジナル作品が映画化されたのは、この作品が初なんだそう。しかもキムタクの直接オファーでタモリさんが本名の森田一義名義で大物代議士役を演じたり、松たか子さんと松本幸四郎さんとの親子共演が実現したり、話題にとかく事欠かない映画でした。

放映が始まってすぐに「H E R Oに社交ダンスが登場している」とTwitterがざわついたのですけど、劇場で見たはずなのについぞ記憶にない!改めて今回テレビで見直して、ははーんと思いました。小日向文世さんと大塚寧々さんがチラッとタンゴを踊るシーンがあるっちゃあるけど、ストーリーと何のつながりもないし、イケナイカップルの関係性の一端を表現するための小道具として使われとるやないかい。
それでもキムタク主演の大ヒットドラマの映画化ともなれば、ダンスシーンのロケの模様は社交ダンス雑誌で大々的に取り上げられたそうです。H E R Oに社交ダンスが登場するという期待を胸に映画を見た方がいたら、がっかりしたかもしれませんね。テレビ放映の日の私のようにね!!

ダンスに関することはともかく、映画の方は十分に堪能できるものでした。さすが平均視聴率30%超えという驚異的な数字を叩き出したおばけドラマ。後に松たか子さん演じる事務官役が北川景子さんに交代してのシーズン2も、平均視聴率20%代、2014年の民放連続ドラマで1位を記録したそう。

何と言っても見どころは法廷劇。H E ROで裁判シーンが描かれるのは、TVシリーズ第8話の「過去を知る女」以来だそうです。松本幸四郎さん演じる蒲生は刑事事件無罪獲得数日本一を誇るヤメ検の弁護士。大藪の依頼を受け梅林の弁護人となります。検事時代は「被疑者と徹底的に向かい合う」という久利生と似通った信条を持って仕事をしていたのに、多くの冤罪者を生みながら自分の保身しか考えない検察に失望し、検事を辞め今に至ります。

久利生と蒲生は表裏一体。蒲生は論理と確たる証拠を重視する主義で、久利生の立証を難なくかわして逆に追い詰めていきます。久利生が韓国へ行ってまで集めてきた梅林の犯行の証拠をあくまで「このような証拠は脆弱だ」と頑なに否定しますが、それはかつて自分がいた検察への憤り。貧弱な証拠を元に容疑をかけるのであれば、その立証の脆弱さそのものが反証だと久利生にぶつけてきます。蒲生の信念に気づいた時に久利生はどうするのか。それぞれの信念のぶつかり合いは迫力満点です。





映画版だからといって、特別に物語のスケールが大きくなったり海外ロケに頼ったりすることなく、TVドラマ同様、東京地検城西支部の面々の楽しいやりとりが中心になっています。社交ダンスの扱いは置いておいて、見応えのある楽しい作品です。