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コラム「だったらお前がやればいいだろ」

第2話「だったらお前がやればいいだろ」

2018/11/4

言わなくてもよいことがはずみで口から出てしまう。
カップル間の心の距離が縮まる程はずみの出る確率が高くなるのは、何もダンサーに限った話ではありません。

恋だ愛だと言っていたあの頃、
君の気を引きたくて、
嫌われたくなくて、
選び抜いた言葉を投げ掛けていました。

それがどうでしょう。
タンスにゴン、亭主元気で留守がいい。
あるCMの名言です。
年季が入ると相手に発する言葉はこうも変わるものか。
きみまろ先生も仰っています。
新婚二日目は玄関でチュ!
あれから40年。
もう帰って来たの?チェッ!

そもそもカップル結成から数ヶ月位は、相手のことを注意するなんてあまり無かったのではないでしょうか。
「ココやりにくいね、今度のレッスンで見てもらおうか。」
「あー、ルーティン飛んじゃった!ゴメン!」
口調もセリフも気遣いに包まれています。
あれから10年。
「なんでココでそうなるんだよ、昨日のレッスンで何聞いてたんだよ。」
「あー、お前のせいでルーティン飛んじゃったじゃないか!」
先月お話しましたように、踊りにくいのは相手に原因があるものだと思ってしまう悲しい性を抱えている方は多いのです。

しかしこれはいけません。ダンスのカップルは、一つの目標に向かって共に戦っているという点において夫婦間の絆の形と大きく異なります。このような状況を放っていおてはいかんのです。そして最も愚かな流れはこうです。
「ちょっと、左手落とさないでくれない?」
「だったらお前が右手上げればいいだろ。」
伝家の宝刀おうむ返しの術です。
「会議ばっかりでちっとも練習できないじゃん!」
「だったらシャドウでもなんでもしてればいいだろ。」


Aをしてくれない?対して、だったらお前がA(もしくはB)すればいいだろ。
これはあらゆる状況に対応することができる秘技ですが、残念ながら上達を導く為の正しい解ではございません。むしろ禁句ですがしかし、返し方に気をつけさえすれば良い方向に導くことが出来るビッグチャンス到来でございます。

そうだねAしてみるよ。

なんのことはない。
しかし皆様これができない。
そのAがどれだけ気にくわないものでもやってみるのです。プライドを捨ててやってみるのです。
「そうだね、左手上げるよ。」
80%の確率ですぐ問題は解決します。
しかしここで言う「問題」というのは相方の要求Aのことではありません。喧嘩の火種のことです。そして何も変えずにさっきと同じように踊ってごらんなさい。
「ほら良くなったじゃん」
と得意げに言ってくることでしょう。

自分が投げ掛けた問題に相方が向き合おうとしてくれた、それだけで気分が良くなり、自然とボディートーンや相手へのセンシティビティーが増幅します。自分が変わったことに気付かずに、さっきより良くなったのはあなたが悪い所を直してくれたからだと落ち着くのです。

さぁ、この記事を読んだら相方に見られる前に1ページ綺麗に切取って捨ててください。

俺パー的教訓其の二

文句と受け取るか助言と受け取るかは
あなた次第。