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ニュース山本英美先生に聞く!! 2022バルカーカップの注目ポイント<ラテン編>

インタビュー 2022/11/14

山本英美先生に聞く!! 2022バルカーカップの注目ポイント<ラテン編>

2022年11月20日に行われる「バルカーカップ ジャパンオープンダンス選手権」。プロフェッショナルとアマチュアの選手が同じフロアで熱い火花を散らすという史上初の試みが開催前から話題になっています。今回はラテン部門の見どころを山本英美先生に伺いました。

こんなに結果が楽しみなコンペがありますか?


プロとアマが同じフロアで勝負するという前代未聞のコンペに、私はただワクワクしています。先入観を持ちづらいジャッジによる審査ということで、本当に結果の予測がつきません。選手にとって普段できないことにチャレンジするいい機会です。プロの選手には立場に対する意地がありますし、アマの選手はプロフェッショナルに対抗することを過剰に意識してしまうかもしれません。守りに入らず、萎縮せず、双方とも思いっきりチャレンジしてほしいものです。

プロの選手はドレス・ヘアメイクという外見的要素はもちろん、踊り自体も洗練されていきます。シビアな審査にさらされたり、ショーに呼ばれたりする経験値で自然と磨かれていくのだと思います。
対してアマの選手は元気で溌剌と動き、身体能力が高いのが特徴です。
どう審査をするのかは本当に難しいところですが、最終的にはフロアでどれだけ魅力を発揮できるかだと思います。私自身、愛くるしさや魅力的な笑顔についチェックを入れてしまう場合があります。技術が足りなくても、天性の魅力で目に飛び込んでくる選手がいます。一方で、常にその魅力を発揮するためにはしっかりとした技術力が必要です。今回はフロアでそれらがどう出てくるのか、本当に予測ができません。
こんなに結果が楽しみなコンペが昨今ありますか?

英美先生の注目選手



■鈴木佑哉・原田彩華
彼らの特色はなんといっても体幹の強さです。日本人には珍しく本当に軸がぶれず、どんなにスピードを上げても緩急がグッと効果的に出てきます。体幹の強さはどのダンスにも必要なことで、リズムダンスでもパソドブレでも一番オールマイティな選手だといえます。
ターンプロしたばかりの頃はアマ選手にありがちな無駄な動きが見られましたが、プロになってからはそれらが削ぎ落とされてきました。アマ選手と一緒のフロアで踊ると、違いが如実に出るでしょうね。人柄も純粋でひたむきです。JDCチャンピオンとして団体とプロフェッショナルの意地を背負って戦うことになると思いますが、プレッシャーを跳ね除けて彼ららしいパフォーマンスをしてほしいです。


■瀬内英幸・斎木智子
とても滑らかで上品で、綺麗なカップルです。社交ダンスではラテンといえども品格がとても大切ですが、瀬内・斎木組は天性のものを持っています。なんといっても私が目を奪われるのはルンバです。動きが途切れなく流麗で、瀬内選手の男性らしさと斎木選手のしなやかさが存分に生かされています。今の良さに強さが加わるとさらに進化するでしょう。いつもと環境が違うフロアでどんな踊りを見せてくれるのか大いに期待しています。


■藤井創太・中村安里
アマチュアの注目選手です。藤井・中村組の特色はスター性に他なりません。会場を自分色に染めるような、お客様を惹きつける何かがあります。技術力を備えてはいますがそれだけにとらわれることなく、音楽と会場の空気を楽しみ、集中できる力があります。今のアマ選手の中では押しも押されぬ不動のチャンピオンという感じですが、鈴木・原田組や弟の鈴木奨太・鈴木千尋組は昔からの仲間であり、ライバルです。そんな彼ら彼女らと再び合間見えることで、普段の力を超えるものが出てくるかもしれませんね。
パートナーの中村安里選手は、技術力やダンサーとしての魅力が上がってきていて伸び盛りです。組んだ当初は肉体的にも精神的にも大変だったでしょうが、カップルとしての魅力を増しています。

ファイナル争いにも注目


今回は「去年の、これまでのチャンピオン」が不在な分、結果の予測がつきません。アマの選手はこのフロアを堪能して、しっかりと存在を見せつけてほしいですね。鈴木・原田組と瀬内・斎木組は違いが明確で、それぞれが自分達の良さを理解しています。好みでこっちを見てしまうとか、種目が変わればあっちを見てしまうとか、お客様は大いに迷って、その迷いを楽しんでほしいですね。
さらには中川智宏・毛利桃子組や箱田翔次郎・田原麻吏可組もJDCでは安定的に成績を出している魅力的なカップルです。最近移籍してきた東海林祐介・立花悠組も、大柄でフロアで目に入ってきますね。新カップルを結成したばかりの奥野貴・石井沙耶組も、もうすでに息も合ってきていますし、二人とも同じ特色と強さを持っているので、これからが楽しみです。松岡孝宣・三橋櫻組は、今年9月に行われたFreedom’s Cupショーダンス選手権でいきなり表彰台に立った逸材です。

アマの選手では大木大樹・大木風香組やSergey Volkov・西山さくら組もファイナル常連、どんなチャレンジをしてくるか楽しみです。思った以上に若手の選手が参戦してきていることも要注目です。津田琥汰朗・津田マリア組はまだ若手ですが、勇気を持ってエントリーしたことにエールを送りたいですね。この刺激をどう今後の成長に活かしていくのかも見守っていきたいです。

ジャッジは大変でしょうが、お客様には目を奪われる方を素直に見て、自分が見ていてワクワクするダンサー、楽しくなるダンサー、一緒に踊りたくなるダンサーを見つけて応援してあげてほしいです。

大会への期待


最近の社交ダンスの競技会は、これまでになかったことがいろいろ起きていると思います。プロフェッショナルとアマチュアが同じフロアで戦うというのは賛否両論あるかもしれませんが、特色ある大会が行われることを前向きに捉えてどんどんチャレンジしてほしいですね。選手にとって競技会は通過点でしかなく、一つ一つが刺激になって選手たちを成長させていきます。
「プロフェッショナルがアマチュアに負けたからダメなんだ」などの狭い考えに捉われず、そこから得られたものを糧にしてほしいです。

また運営する側としては、選手が成長する機会をできる限り作り出してあげることが大切でしょう。出場したいと心から思える魅力ある競技会づくりが必要なのではないでしょうか。そこから生まれてくるスターを大切にして、みんなのスターとして育てていきたいものです。

私がまだ現役選手だったら喜んで参戦したでしょう。本番に勝る練習はないのです。私が選手だった頃は、スケジュールの許す限りコンペを探して、規模にとらわれずどの試合でも全力で向き合ったものでした。ダンサーの仕事は踊ること。無心で踊ってみんなに楽しんでもらうことが何よりも大切で、それを繰り返すしか強くなる道はありません。うまくなる人はどこに行っても、どんな環境でもうまくなるものです。普段道を歩いていたって上達はできます。自分自身がワクワクする気持ちを抱えて挑戦してほしいですね。「2位になったらどうしよう」と余計な考えにとらわれるとワクワクはなくなってしまいます。そのためにはリハーサルと練習しかありません。完璧に仕上がっていればあとはやるだけ。まずは成績は考えずに、しっかり準備をして楽しんで踊ってもらいたいですね。

大会ライブ配信情報


無料:Youtube JDC公式チャンネル(予選~準々決勝)
有料:Streaming+ 通常チケット 1,600円/簡単視聴チケット 2,000円(準決勝~決勝)
お申込は下記特設ページをチェック↓
https://valquacup.webnode.jp/


<山本英美プロフィール>
統一全日本ラテン5年連続チャンピオン、統一全日本ショーダンス5年連続チャンピオン、世界選手権ファイナリストUK選手権準決勝、全英選手権(ブラックプール)準決勝、ロンドンインター準決勝など、国内外の競技会で活躍。現役を引退後は、競技選手の指導・育成に励むほか、TBSテレビ「金スマ」の社交ダンス企画の講師としても人気を集める。

(取材:山内一弘/文:賀曽利奈穂)

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