2022年11月20日グランドプリンスホテル新高輪「飛天」において「バルカーカップ ジャパンオープンダンス選手権」が開催されます。
このコンペは日本最高峰の競技会であり、プロフェッショナルとアマチュアの選手が同じフロアで熱い火花を散らすという史上初の試みが開催前から話題に。
『フリー&フェア』を最重要な理念に掲げ、これまで日本人を教えたことがないなど公平性を担保したジャッジが評価を行います。
このような注目を集める大会について、ボールルーム部門の見どころを中川雄太先生に伺いました。
新しい舞台に恐れずチャレンジを
プロとアマを同じ土俵で競わせようというコンセプトに当初は驚きましたが、従来にない新しいことをやろうというチャレンジ精神に共感しています。選手は立場の違う選手に負ける恐れを抱くかもしれませんが、誰にでも番狂わせのチャンスがあるからこそ、怖がらずにチャレンジすることの方がカッコいいですよね! 新しいことをやる恐怖心は当然あるでしょうが、大いに観客やファンを湧かせてほしいです。
僕が現役の頃に比べるとアマの選手は確実にレベルが上がっています。若さから来る純粋なエネルギーがありますし、プロと同じフロアに立つことで、フロアクラフトや無駄のないスピード感に刺激を受けるでしょう。逆も然りで、双方の立場が混ざり合うことで、純粋な勝負ができるんじゃないかと思いますね。さらに例えば小嶋みなと・盛田めぐみ組のように、いつもは特定の団体(小嶋組は主にJDSFの競技会に出場)で勝負している選手が広くアピールする機会にもなりそうです。
雄太先生の注目選手
■森脇健司・的場未恭
とにかく安定感のあるカップルです。森脇選手は人柄的にもおっとりしていていい意味でマイペース、的場選手は森脇選手のリードに支えられ表現力が素晴らしく豊かです。いつもコンスタントに踊れて波がなく、ミスがありません。こういう選手はジャッジが落としにくいですね。一方で長年JDCチャンピオンに君臨してきたカップルですから、今回の大会で一番プレッシャーを感じやすい立場かもしれません。感情の波をコントロールして、いい意味のマイペースを貫いてほしいです。
■西尾浩一・下田藍
フレッシュで若手な印象がありますが、すでにベテラン選手ですね。コツコツ地道に実力を上げて、本当に頑張っている選手の一組だと思います。森脇組が不在だったとはいえ、今年7月の全日本では一位を取っていますしね。彼らの特色は繊細で、テクニックがしっかりしているところ。その強みは昔から変わらず、雑なところがありません。しっかりと足元からエネルギーが来て、大きく崩れない。プロとしての自覚を持って質を上げる努力を怠らない、実直で好感が持てるカップルです。
■田中孝康・加藤美智子
最近ジリジリ成績が上がってきており、西尾・下田組と拮抗してきていますね。Freedom’sCupショーダンス選手権でも新境地を切り開いたんじゃないでしょうか。学連チャンピオンとして活躍し地力が高く、ルックスやカップルバランスにも恵まれ、最近はさらに磨きがかかってきているイメージです。環境が変わっても競技に集中し、ひたむきに取り組んでいることがわかります。
■石原正幸・石原蘭羅
JDCに移籍して、JDC全日本とFreedom’sCupショーダンス選手権でいきなり上位入賞。存在感を見せつけ、今回一番注目を集めそうなカップルです。リーダー・パートナーともジュニアの頃からアマチュア選手として大活躍し、今回のフロアでの闘い方を体感的にわかっているかもしれませんね。ラテンも踊れて身体能力が高く、他のプロフェッショナル選手と違う個性を持っているので競技になった時にどう見えるのか楽しみです。優勝争いに食い込む可能性も大いにあると思います。
■亀川隆史・新保伊央
リーダーの亀川選手はプロデビューしてすぐにファイナリストになった実力派。新保選手と結成後もJDC全日本でファイナル入りしています。足元がとてもしっかりしており、大柄な選手と同じフロアで踊っても埋もれることがなく、存在感があります。しばらく競技会に出場できなかった時期をバネに、この辺で他の選手を圧倒してやろうという勢いを感じますね。
■小嶋みなと・盛田めぐみ
アマチュアの要注目カップルです。最近の彼らを直接は見られていませんが、長年にわたりアマチュアのスタンダードチャンピオンとして君臨していますね。小柄ですが、そう感じさせないエネルギーに満ち溢れたダンスが強く印象に残っています。優勝争いにどう絡んでくるかを楽しみにしています。
小嶋組以外のアマチュアにも注目
■岩崎将之・中山絵里加
長身で日本人離れしたルックスを持ち、フロアを見ていてパッと目に飛び込んできます。スピード感やエネルギーがあり伸び代は十分です。団体問わず本当にいろいろな競技会に出場しているので、お客様の知名度はもしかしたら一番かもしれません。客席を味方につけて、進化した踊りを見せてほしいですね。
■飯沼孟大・馬場えりな
透明感があって、爽やかで、目の前を通るとポーッと目で追ってしまう魅力があると思います。全体的に綺麗でまとまっており、岩崎・中山組一組とだけ比較しても、付け方や重視するポイントによって結果が変わってきそうですね。伸び盛りで最近上位に食い込んできているので、十分チャンスがあるのではないでしょうか。プロ選手との上位争いに食い込む可能性もあるのでは。
■棚橋健・土屋舞姫
Freedom’sCupショーダンス選手権でプロの選手に果敢に挑んできて、今回も来たな! という感じです。実はあの時はアマの選手だとは気づかず見ていて、覚えのない上手な選手がいるなーという感じだったのですが、パートナーが可憐で、欠点がなく、カップルとしてよくまとまっています。アマの選手だからと先入観は持たずに見ていたのですが、正直巧みで驚きました。競技になった時にどう見えるか期待しています。
もちろんアマ選手だけではなく、プロでいうと他にも寺門組、斎藤組、岡組、柴山組…気になる選手はたくさんいますが、優勝争いというだけでなく、異なる立場の選手がどういう展開の勝負を繰り広げるのかにも注目したいところです。
悩ましい評価基準
ジャッジは選手の人生を背負っているもの。その責任は常に大きいですが、今回は本当に難しいです。アマの選手はスピードや動く大きさ、距離など身体能力に秀でていますが、プロになるとその源流がより大切になってきます。大きく動けてはいても、身体能力やリーダーの力頼みでは動きの質が上がってきません。ダンスの技術やカップルの調和から発生するエネルギー、音楽性、表現力。最終的にはそれらの総合力で、愚直に評価をするしかないと思います。
一つの基準はコンスタントに踊れる安定感です。競技会が進んで何ラウンドも進む中で正しい根拠に基づいた動きをしていないと、いろいろな意味でバテてくるし、アラが目立ってきてしまうんですね。例え1曲の中であっても、最初の30秒はいいのに後半で雑さが出てきたら本物とはいえません。決められた時間、きちんと質の高いパフォーマンスできるというのが、一つの基準になると思います。僕は社交ダンスが社交ダンスたる所以、カップルが二人で踊ることの意味を体現している選手にどうしようもなく惹かれます。
大会全体の課題としては、公平性を担保したジャッジを継続的に選任することの難しさが一つ挙げられますね。フェアネスに一石を投じた意義はすごく大きいと思うので、来年以降はより多くの選手が参加してくれることを願っています。
大会ライブ配信情報
無料:Youtube JDC公式チャンネル(予選~準々決勝)
有料:Streaming+ 通常チケット 1600円/簡単視聴チケット 2,000円(準決勝~決勝)
お申込は下記特設ページをチェック↓
https://valquacup.webnode.jp/
<中川雄太プロフィール>
元 JDC中部総局ボールルーム部門SA級。アジアオープン・アジア部門優勝(2013年)。ジャパンオープン選手権優勝(2011年・2013年・2014年)。統一全日本戦セミファイナリスト(2011〜2014年)。2016年に現役競技を引退し、現在は愛知県名古屋市のスタジオ「中川雄太ダンスアカデミー」を拠点に、後進の育成に励む。
(取材:山内一弘/文:賀曽利奈穂)