はじめまして、下田藍(しもだ・あい)と申します。いきなり自己紹介で恐縮ですが、都内在住、プロの競技ダンサーとしてスタンダード(ボールルーム)部門の試合に出場中。所属はJDC東部です。
パートナーは西尾浩一(にしお・こういち)です。
そして今、競技ダンスを題材としたBL漫画「10DANCE(講談社/井上佐藤先生)」のダンス部分の監修をやらせて頂いています。
その関係で、漫画を読んで競技ダンスに興味を持った方とお話しすることや、質問を頂く機会があります。今、一番多い疑問・質問が「どうやって本物の試合を見に行けばいいのか」です。こんなにたくさん、競技ダンスを、試合を、観に来たい方がいたのかと嬉しくなるとともに、我々競技ダンスの団体が一般に感じせる敷居の高さ、そして発信している情報インフラとコンテンツの貧弱さを改めて認識させられました。
「観に行きたい」と思った方々が一人でも多く会場に来られるように、また、どうしたらもっと沢山の方々が試合に来てくれるのかを考えつつ、この記事を書かせていただきます。ここではまず、
「初めて競技ダンスを試合を見に行くには」を想定してガイドをさせて頂けたらと思います。
試合の探し方
今観に行ける試合をどうやって探したらいいか? ほんとに第一段階ですが、ここでつまずいたという声をたくさん頂きました。確かに、現状インターネットで「競技ダンス 試合」と検索しても、それらしいサイトはたくさん出てきますが、どこを見ていいか判別できないと思います。
まず大まかに分けて、「アマチュアの試合」と「プロの試合」がありますのでそこから考えてみます。
アマチュアの試合
まだダンスを初めて間もない方、ジュニア、学生、社会人、シニア等、年齢やクラスに分かれて様々な大会が行われています。アマチュアだからと言ってレベルの低い試合という意味ではなく、さまざまなクラス・レベルの中で、プロ同様ハイレベルで白熱した試合も見ることができます。
その中で私のおすすめのカテゴリーを2つ。
・JDSF公認全国メイン競技会
(参考サイト
http://www.jdsf.or.jp/index.php/competition2/result/main)
全国各地で年間300以上のアマチュアの試合がJDSFによって行われていますが、その中でメイン競技会と呼ばれる試合には全国のトップアマチュアが参加し、国内ランキングや海外派遣選考を掛けて競うため、ハイレベルで白熱した試合が見られます。
首都圏以外でも開催されるので、まずは近隣で行われるグランプリを選んで観に行くのがおすすめです。入場料は無料(!)から数千円。事前に申し込んでチケットを買うか、当日券もあります。
漫画で言えば「ボールルームへようこそ」の舞台モデルとなっているのが、このJDSFの試合です。作中に出てくる「三笠宮杯」は最も盛り上がる大会の一つ。
・学生競技ダンス連盟(通称:学連)主催の大会
(参考サイト
http://www.univ-dance.gr.jp/J-Block.html)
競技ダンス部の大学生たちが自らの運営で行う大会で、入場料は無料です。会場に行って、パンフレットを買って観戦。予約は一切なしでとても気軽に行けます。ただしほとんどの座席は大学に割り振られているため、少ない一般席か立ち見になります。選手名だけでなく大学名も叫ばれる掛け声や熱い声援、エネルギッシュなダンス、学生ならではのファッショナブルな衣装やメイク等、学連ならではの面白さがあります。
特に夏・冬にある全日本戦は4年の集大成という意味合いもありものすごい熱気です。「背すじをピン!と」という漫画(作中では高校のダンス部でしたが)のファンの方には、ぜひ学連の試合で、リアルに熱気と青春を感じてほしいです。学連本体だけでなく各大学に広報係がいるため、HPやSNSが充実していて事前の情報収集が捗ります。
プロの試合
プロも各団体が全国の各ブロックで年間通して試合を開催しています(当サイトおどりびよりには、それらをまとめたわかりやすいカレンダーがあります!)。
「まずはとにかく観てみたい」場合、大き過ぎない会場でダンスの迫力を感じてみてはいかがでしょうか。東京であれば、ファーストプレイス東京、後楽園ホール、ニューピアホール等がおすすめです。これらの会場での試合は会場で当日券を購入可能、または開催1週間くらい前まであれば、主催者や出場者に問い合わせることで前売り券を買うことができます。連絡して事前振込→郵送、または当日会場精算になるかと思います。
提供:下田 藍
逆に大きな会場……アリーナがあるような体育館やスタジアム、武道館、新高輪グランドホテル「飛天の間」等、これらで開催される試合は、トップ選手が揃ったり演出が豪華だったり見応えがありますが、開催数カ月前にチケットを取らないと前列で見るのは難しいです。
まずは間近で、選手の表情や衣装も楽しみながらの観戦がおすすめです。ダンス漫画「PARTNER」や「10DANCE」の主人公たちはプロの世界で活躍しています。ファンからの期待を背負って戦う姿、大人の人間関係、世界への挑戦の片鱗がプロの試合からは感じられると思います。
観戦が決まったら!
観に行く試合が決まり、チケット手配も完了したら、あとはその日を数えて楽しみに待つだけです。
……それだけなんですが、以下はよりディープに楽しみたい方向けに。試合1週間前になると、試合出場者が各団体の試合情報ページで発表になります。そこでどんな選手が出るかをチェック。昨年の試合結果もHPには掲載されていますので、昨年の同試合の優勝者やファイナリストをチェックし、あらかじめ優勝候補者の情報を押さえる……という予習ができます。
もし既に応援したい選手がいる場合は、「応援グッズ」を作りながら、自分内で早々に盛り上がるとこともできます。アイドルコンサートのようなキラキラモールやシールのついたうちわはどの会場でも使えます。
質実剛健派のあなたは、A4の紙にフォントサイズ330くらいで選手の名字を印刷しましょう。「下 田」と書かれた紙を当日胸の前に持っていただければ、私ならテンションめっちゃ上がります。
選手は応援されればされるほど嬉しいものですから、当然パフォーマンスも上がります。
また、同じく試合1週間前くらいになると、試合情報でタイムテーブルも発表になります。開始時間や終了時間がわかりますのでチェックしましょう。
試合は午前中から夕方まで5時間以上にわたることも多いので、ぶっ通しで観るのは体力が要ります。予選が複数ある場合は、1次予選からではなく2次予選・3次予選から行く、または途中の予選の時間に休憩ティータイムを挟む等、余裕を持った観戦タイムの計画を立てましょう!
観戦当日
・服装
「どういう格好で観戦に行ったらいいですか」とよく聞かれます。
私が知る中でドレスコードがある試合は新高輪グランドホテル「飛天の間」で行われるバルカーカップくらいでしょうか。他の試合はいわゆる普段着、お出かけ着で全く構いません。特に体育館で行われる試合は「スポーツ観戦」のつもりで、長時間観戦しても疲れない格好でOKです。
ホテル内で行われる試合も同じスタンスで構いませんが、ホテル内には宿泊やダンス以外の利用者がいらっしゃいますので、それを念頭に入れた上での普段着が良いと思います。
・会場内
入場して席を確認・確保して観戦開始。その後は出入り自由です。再入場もできるので、疲れたら適宜休憩をはさんでくださいね。ペットボトル等の飲み物は会場内で飲めることが多いです。会場で注意喚起があると思いますが、その他飲食に関しては会場内の決められたスペースでというパターンが一般的。
・試合の進行
各ラウンドの始めに、勝ち残った選手が発表されます。予選の段階では名前ではなく背番号で呼ばれるので、パンフレットにメモしたり〇したりしてチェックすると見やすくなりますよ!
選手は、事前に控室等で結果が張り出されるので把握していますが、決勝に関してはお客さまと一緒にアナウンスで知るというパターンもあります。選手と一緒にドキドキしながら結果発表を待つのも醍醐味の一つですね(「おどりびより」のLINEアカウントでもでも全国規模の試合は結果速報中!)。
・撮影
試合中の写真・動画撮影の可否、料金の要不要は試合ごとに異なります。試合情報に書いてあることも多いですが、見つからない場合は事前に主催者に確認、または当日受付で確認してください。撮影自由の試合や撮影許可が下りた場合は、撮った写真をSNS等に上げるのもOKです。
・選手との接触
出場する選手は会場内をうろうろしていますので、「かっこよかったです」等、声を掛けてくださるのはとても嬉しいです! 次のラウンドへの励みになります。ただし、試合終了までは選手はコンディションを整えたり、集中しようと努めています。例えば選手と記念撮影や、差し入れを渡す場合は試合終了後の方が良いです。試合終了後だとゆっくりお話もできるので、選手としてもありがたいですね。
・応援&声援
試合中、声援・掛け声は自由です。試合においては「エレガントな社交界」ではなく、「スポーツ観戦」のイメージが合っています。予選を何度か見るうちに、きっと自分の好みの選手や応援したい選手が出てくると思います。
・背番号、名前を叫ぶ。
名前は呼び捨てやニックネームなど、呼びやすい物で大丈夫。敬称略でも失礼じゃありません。私だったら「シモダー!(名字)」「アイー!(名前)」「シモー!(ニックネーム)」等で呼んでもらっています。
背番号は、耳に入った審査員がその番号を探したり見てくれる可能性がある……というニュアンスで良い応援の仕方です。外国人ジャッジのときは頑張って英語でお願いします(笑)。
・目の前に選手が来たら……
「キャー!」「ヒュー!」と歓声を上げる、拍手する、「かっこいい」と言ってあげる……等で選手の元気と勇気は100倍になります。ぜひ気分を乗せてあげてください!
・声を出すのはまだ恥ずかしい……
そんなときや、叫び過ぎて予選で喉がつぶれたという方は、応援グッズの出番です。うちわや紙を思い切り振りましょう!
選手はお客さまにダンスを披露すると共に、審査されているため、緊張と隣り合わせです。そんなときに頂く応援は「あなたを見てます!」「素敵だから自信を持って」と言ってもらえているようでとても嬉しいのです。
そして観客としてのスポーツ観戦の醍醐味は、叫んだり手を振ることで、自分も試合に参加している気持ちになれますし、程よく体力も使うことだと思います。ダンスの試合でもぜひ、それを味わってほしいです。
提供:下田 藍
提供:小野晃歳・麻耶組
しおりのすすめ
最後にちょっと違った観点からのおすすめを。こちらは主に出場する選手、初めて試合を観るお友だちを連れていく方向けです。
私自身、ダンスをやっていないお友だちや家族が試合を観に来てくれることが多いのですが、その際に予習用の「観戦のしおり」を作成することがあります。
内容は、タイムテーブル、当日行われる各セクションの概要説明、見どころ、昨年の入賞者を中心とした選手のプロフィール等です。
特に自分のプロフィールやキャッチフレーズなんかを書いたりするのは相当な自作自演感があって「何書いてるんだろう」なんて思っちゃいますが、今自分が何を魅せたいかを再認識できたりもします。
最後に
現状、競技ダンス試合の観客は、既にダンスを習っている方がほとんどです。他のスポーツと同じように、観るだけでも十分楽しい! と思ってもらえたらと願っています。
同時に、ダンサーや試合を作る側として「どうやったら観に来やすくなるか」「どうしたらもっと観客に楽しんでもらえるか」について、さらに強い問題意識を持って取り組んでいけたらと思います。
それでは皆さん、楽しい競技会観戦を!