おどりびよりロゴ

 

ニュースJDCに移籍した増田大介・塚田真美組に聞く「ダンス界の未来への想い」

インタビュー 2022/05/3

JDCに移籍した増田大介・塚田真美組に聞く「ダンス界の未来への想い」

2022年スーパージャパンカップダンスのセグエ選手権をもって、すべての競技から引退した増田大介・塚田真美組の公益財団法人日本ボールルームダンス連盟(以下JBDF)から公益社団法人日本ダンス議会(以下JDC)への移籍が発表されました。このタイミングでの移籍にどのような思いがあったのか、ご本人たちからお話を聞きました。

移籍に至った経緯


増田大介「JBDFを退会させていただき、承認されれば5月から二人ともJDCに移籍します。3月のスーパージャパンカップダンスの後、一ヶ月くらい考え移籍を決意しました」

塚田真美「現役の時には移籍だなんて考えてもみなかったのですが、今後は選手を引退してダンス界を支え、盛り上げていく立場になります。現状の立場で自分たちのやりたいことができるのかをふと立ち止まって考えてみた時に、移籍ということも選択肢として自然と考えるようになりました」

きっかけになった出来事


増田大介「きっかけは2月のアジアオープンダンス選手権です。『今度のアジアオープンは凄いらしい』というキャッチコピーが体現されていました。ミュージカルとコラボレーションする形という新しい試みがなされました。僕たちはミュージカル女優の知念里奈さんの歌唱でデモンストレーションをさせて頂いたのですが、他団体の僕たちを抜擢してくださったのはとても懐の深いことだと思いました」

アジアオープンでショーを披露した増田組。



塚田真美「自分たちの出演のことだけではなく、競技会の在り方として感動しました。選手の方達がファイナルを踊り終えた後に、1組ずつ踊られました。初めて見るお客さまにも選手のことが理解できて応援しやすかったと思いますし、選手たちにも見せ場があって嬉しい演出だと思いました」

増田大介「僕たちが踊ることに関しても運営の先生がたが『今日はありがとう』とすごくウェルカムな雰囲気で、『いえいえこちらこそありがとうございます』という感じでした。今までは新しいことをやろうと思ってもなかなか実現しないこともあったのですが、本気でやるつもりなんだなと気概を感じました」

塚田真美「ただ、その時の私たちの所属はJBDFなので、スーパージャパンという最後の競技の場までしっかり集中して踊ろうと思っていましたし、アジアオープンに関しても、素晴らしい大会だなと感動しただけだったんです」

具体的にどのように今後の進退を検討したか


塚田真美「実は、私たちがアジアオープンで踊ったことを、快く思わない方々もいらっしゃいました。それは現状の仕組みでは当たり前のことかもしれませんし、それで何かわだかまりがあって移籍を考えたというわけではありません」

増田大介「ただ、現役を退いて今後を考えるにあたっては、ダンス界全体の視野を持って行動したいと二人とも常々考えていましたので、JDCのほうが自分たちのやりたいことがすぐに実現できるのではと思いました。僕たちはエネルギーがあるうちに何か変革を起こしたいけれど、現在の状況ではかえってご迷惑になってしまうのではと考えました」

塚田真美「世界でも団体ごとに価値観の違いがあることは理解していますが、日本だけでも一つになって仲良くやっていきたい。けれど、アジアオープンをきっかけに、ちょっとそれは難しそうだと感じました。目的は一緒なはずなのに、アプローチの仕方が違うというか。私たちがやりたいアプローチに現状は合わないのではないかと感じました」

増田大介「僕たちは20年以上JBDFの選手でした。育てていただいた恩義もあるし、その素晴らしさは僕たちが誰よりも知っているつもりです。たくさん感謝する気持ちもあって、離れることには寂しさも感じています。ですが、ダンスに携わっている人みんなが熱く楽しく盛り上がって、スピーディーに物事を変革していける環境に魅力を感じました。団体の垣根を越えて、仲間と一緒に何かやっていければと切に願っています」

ダンス界を盛り上げるためには


増田大介「素晴らしい大会があれば、そこにはお客さまも選手も引き寄せられてくるので、魅力ある競技会を開催することが第一ではないでしょうか。お客さまがいっぱい入って喜んで頂くために、何をすべきか考える必要があると思います」

塚田真美「JDCのエグゼクティブアドバイザーのバルカーグループの瀧澤利一会長は、パーパスブランディング(自分たちが何のために存在するのかという存在意義)もご提案くださっています。存在意義や考え方の核があれば、自然と行動の指針が決まっていくというイメージです。競技会に関してもお客さまファースト、選手ファーストで考えれば新たなアイデアも浮かんでくると思います」

「KMダンスアーツ」の一周年パーティにて。このとき公の場では初めてJDCへの移籍を発表。



今後の活動の課題や抱負


増田大介「選手が出場しやすい環境づくりが、一番大切なんじゃないかと。誰々が出場しているから観に行こう、というお客様も多いはずです。その団体の競技会ということにこだわらず、どこの所属でも自由に競技会に出られるようになってほしいですね。JDCはアジアオープンやフリーダムズカップなど、出場が自由なので、それが当たり前なことだと浸透してほしいです。その結果、順位が流動的になって、今日は誰が優勝するのだろう、誰がファイナルに残るのだろうというワクワク感にも繋がると思います」

塚田真美「私たちは選手も愛好家も減っているということに、もっと危機感を持たなければいけないと思います。いろいろな団体の選手や運営の方達と手を取り合って、ダンス界を盛り上げていきたいと考えています」

増田大介「今までの伝統的な競技会も魅力的であり、そのあり方を残すことは大切ですが、僕たちは直接携わっていけるところで、エネルギーがあって元気なうちに新しい活動にも携わっていきたいです」

これまでダンサーとして、競技選手としてアイコン的な存在であった増田・塚田組。その知名度や唯一無二の存在感を活かして、団体間の架け橋のような活動をしていくことでしょう。今後の活動がとても楽しみです。

文/賀曽利奈穂
写真・聞き手/山内一弘

おどりびよりでは、ダンス関連のニュースを募集しております。

ニュース掲載をご希望の方は、こちらのフォームからご連絡ください。